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アカツキゲームス シナリオ職「ROOTS」に聞く
シナリオディレクション研修の効果

シナリオディレクション研修を経て/アカツキゲームス「ROOTS」

(左から)シナリオ・センター 新井一樹、アカツキゲームスのシナリオ職「ROOTS」リーダー 水野崇志さんとシナリオディレクター 内藤遼人さん

シナリオライターへのフィードバックで困っている業界の方、是非参考に。

『八月のシンデレラナイン』 『トライブナイン』 等々、これまで沢山の人気スマホ向けゲームアプリを手掛けているアカツキゲームスさん。

同社には、ゲームシナリオのスペシャリストが集うシナリオ職(ROOTS)があり、ゲームの内容だけでなく、“ゲームシナリオライターが活躍できる環境づくり”にも注力されています。

ROOTSのリーダー 水野崇志さんによると、「チームに対する満足度の定量的なアンケートを実施しているのですが、2018年当初60%程度だったのが、2020年には95%と大幅に向上しています」とのこと。

実は、2018年からシナリオ・センターの研修「エンタメシナリオ」を隔週 計6回 各3時間、シナリオ職全員必修で導入していただいています。

この研修が満足度向上に役立っているのかも!ということで、ROOTSのリーダー 水野さんと、シナリオディレクター 内藤遼人さんにお話をお聞きしました。広報の齋藤がリポートいたします。「シナリオライターへのフィードバックで困っている……」という業界の方、参考にしてください。

研修をすることになったキッカケ
「自分のノウハウが言語化できれば“再現性”も上がる」

〇水野さん:2018年の春頃、シナリオ担当者の有志が集まり「ROOTS」を立ち上げたばかりで、これからどこを改善していこうかとなったとき、「ノウハウの共有言語化が必要」という話が出ました。

例えば、経歴が異なるいろいろなライターさんがいらっしゃるので、使っている言葉の意味や解釈もさまざま。それが原因でトラブルが起こることも結構ありました。

そこで、シナリオに関する知識やノウハウを、実績がある外部の方に提供していただくことで、うまく回るんじゃないかと考えたのがキッカケでした。例えば、私が研修を行っても身内すぎて「それはお前のやり方だろう」と反発があるかもしれないので。

それで、シナリオ・センターさんのサイトを見て問い合わせたところ、「カリキュラムはカスタマイズできますよ」と言っていただけて、すごく心強かったのを覚えています。

〇新井:最初、研修の組み立てのご相談をいただいたとき、「すごいヤル気だな!」と。6日間しかも毎回3時間ガッツリってなかなかない(笑)。予算もかかることですしね。

カリキュラム内容は、「ドラマとはどういうものなのか」という総論から始まって、「登場人物のキャラクターの作り方」「構成(起承転結)の立て方」「セリフの機能」「直しの技術」などで構成しました。ライターさんもディレクターさんも参加者全員が同じことを学んでいただくことで共通言語ができ、コミュニケーションがスムーズになります。

〇水野さん:この研修を実施するときにライターさんに向けて気をつけていることが2つあります。

1つは、これまでの経験や技術は決して否定しないこと。現場でシナリオを学ばれてきた方が多く、そのやり方でこれまで仕事されているわけですからね。この研修はあくまでもプラスアルファであるとお伝えしています。

〇新井:実は「研修」って言葉、あんまり好きじゃないんですよ、分かりやすいから使っているだけで(笑)。研修と聞くと「できていないからやりますよ」って言われているような感じも少しあるじゃないですか。

そうじゃなくて、「いま既に持っている“武器”をもっとこう使うとこんなこともできますよ!」みたいな感じで整理整頓していく。「できることが増えていくんだ!」って思っていただけるように。

〇水野さん:そうなんですよね。だから、ライターさんに向けて気をつけていることの2つ目は、学ぶこと。

創作には感性やセンスというイメージが少しあるので、「シナリオは学ばなくてもできる」と考える方も中にはいらっしゃると思うんです。

でもシナリオは、“再現性”をなかなかもてないというのが難しいところだと思っていて。感性で書いてしまうと「やっているうちになんとなくうまくいった」ということがあるんですよね。そうなると、次の作品を書くときに、その成功がもとで逆に苦労してしまう。「なんで今回はできないんだろう……」って摩耗して、結果、筆を折ってしまった方もいらっしゃるんですよ。

シナリオの書き方に関する基礎知識があって、自分のノウハウが言語化できれば、「なぜうまくいったのか」「なぜうまくいかないのか」が分かるようになります。そうすることで再現性も上がります。

今まで感性だけでシナリオを書いていた方は研修を通して学ぶことで、自分の知識を少しでも体系化・言語化して、ライターとしての寿命を延ばしていただきたいなと。そういうキッカケにこの研修がなればいいなと思っています。

研修を始めたことで見られた変化や効果
離職者ゼロ/横の繋がりを築く機会にも

〇水野さん:変化に関して分かりやすいところで言うと、シナリオ職の離職者は、ここ数年ゼロが続いています。過去にあった「この人と合わない」という理由での離職は一切ありません。

〇新井:それはすごく嬉しいですね!映像やテレビドラマのシナリオライターがつぶれてしまう理由のひとつに、プロデューサーからのディレクション内容をうまく消化できない、ということがあるんです。

例えば「なんか面白くない」と感覚的なことを言われても、「何が面白くないのか」「どうすればいいのか」が分からないので、ライターさんはどうしたらいいか悩んでしまう。

だから、シナリオライターだけでなく、作る側みんなが共通言語をもって、シナリオの技術に沿ってロジカルにやりとりすれば、齟齬もなくなるし、ストレスもなくなるので、同じ目線で「一緒にいいものを作ろう!」と進んでいけます。

〇水野さん:あと、シナリオ職では満足度の定量的なアンケートを実施しているのですが、チームに対する満足度が2018年当初60%程度だったのが、2020年には95%と大幅に向上しています。

〇新井:嬉しい!いい研修ですね(笑)。

〇内藤さん:ほんとにそうなんです(笑)。

私は2020年に転職してきたタイミングでこの研修を受けました。

その後、最初に関わったプロジェクトでご一緒したのが超ベテランのライターさんたち。前職ではプランナーをしながらシナリオ作りにも関わっていましたが、シナリオの作り方について体系立てて学んだことはありませんでした。

シナリオに関してペーペーな自分が意見を伝えなければならなかったのですが、自分もライターさんも同じ研修を受けて、シナリオに関する共通言語をもっていたので、「この場合はもっとこうした方がいいと思うんです」と建設的に話すことができました。感覚的なやり取りで関係性が悪化してしまうという心配をせずに仕事ができたのは、すごくありがたかったです。

〇水野さん:“ものづくり”って、人間関係とか上下関係とかクリエイティブ以外のストレスのほうが多かったりしますからね。クリエイティブだけに集中できる環境というのはすごくいいですよね。

〇内藤さん:あと、研修で気づけたのが――

〇新井:「起承転結」の「起」が長くなりやすい傾向があること!

〇内藤さん:そうなんですよ、「起」のバランスが(笑)。自分の弱点も研修で分かりました。

起承転結のバランスの話で言うと、研修で「一行ストーリー(ストーリーの内容を1行にまとめたもの)」を作る、というのがあって。要は、シナリオの内容を一行ストーリーにしてみて、それがうまく作れない場合は構成がうまくいっていないよ、という確認方法なんですけど。

これが使えると「一行ストーリーのココのパーツができていないということは、起承転結のココができていないよね」という話ができるんですよ。これはすごい役に立っていますね。

〇新井:ライターさんも修正しやすいですからね。

〇内藤さん:ふわっとフィードバックしてしまうと、何を直せばいいのか意思疎通が図れないまま、ふわっと修正してしまって、結局何も変わっていない、となりがちなんですよね。でも、「こういう理屈でここを直してほしいんです」と言えば、ライターさんも「なるほど」と。

研修で、ディレクションする側は「ロジック:クリエイティブ=7:3」くらいの割合で考えるといいですよ、と教わるんですけど、本当にそうだなと。

あと、副次的な効果もあって。関わっているプロジェクトが違うとあまり顔を合わせる機会がないのですが、研修はプロジェクトに関係なく参加するので、横の繋がりもできました。

例えば、同じ課題に取り組んで、それをシェアする時間があるんですけど、そのときに「この人は短時間でここまでディープでダークな世界感を描けるんだ!」とか「この人はこんなホンワカした物語が書けるんだ!」とか、相手の強みや特徴を知ることができました。

自分のアウトプットに対しても「面白いですね」と言ってもらえたりして、すごく嬉しかった。おかげでその後、シナリオで悩んだときに相談できる関係になりました。

〇水野さん:実は、2~3年後のチーム編成を見据えて、「この人とこの人はいずれ同じプロジェクトになるだろうから、今のうちに関係性を築いておいてもらおう」といった意図もこっそり持って、研修の班構成を考えたりもしています。その意味でも、すごくいい機会をいただいているなと思います。

〇新井:そういう研修の使い方もあるんですね (笑)。水野さんの中長期で見ている視点がすごい!

〇水野さん:こんなふうに、研修がいろいろな結果に繋がっているので、今ではフリーランスなど雇用形態に関係なく、シナリオ職全員の必修ということになりました。

研修終了後はゼミへ
クリエイティブで“遊ぶ”ためにロジックが大切

〇新井:研修では「フィードバックすること」も大切にしています。その日の研修を受ける前と後に、課題として書いたシナリオに対する自己評価を書いていただき、講師も同様に研修前と研修後でどこが変わったのか、客観的にお伝えしています。

創作はできるようになったことが見えづらいところがあるので、こういうカタチでビフォアー・アフターが分かればいいかなと。

〇内藤さん:フィードバックをいただくと、成長を実感できますからね。

〇水野さん:この研修が終わった後は「ゼミ」もやっていただいています。

研修ではシナリオに関する知識を体系立てて学び、ゼミでは研修で学んだことを実践していきます。「知識としてはあるけど、まだ活かしきれていないことを探る」みたいなことができるわけです。

〇内藤さん:研修も楽しいですけど、このゼミもまた楽しいんですよね。

「こういう理屈がありますよ、じゃあやってみよう!」という感じで、ロジックとワークがセットになっていて、ワークにおける“発想の部分”は自由にやらせてもらえます。普段の仕事では、決まった設定の中でしか作らないので、自分のクリエイティブを発揮できるのはすごく楽しい。

〇水野さん:ゼミのカリキュラム内容も新井さんに相談させていただいて設計しました。

自分の個性というよりは他人の個性に合わせる仕事も多かったりするので、このゼミが、「自分は何にこだわっている人間なのか」「何が書きたいのか」といった自分の強みを自覚・再確認できる時間になればと思って。

また、クリエイターも同じことばかり繰り返しているとモチベーションも保ちづらく、スキルが伸び悩むこともありますので、こうした刺激になるような場を、今は年に1回というペースですが、できれば定期的に用意したいなと考えています。

〇内藤さん:ゼミで特に面白かったのが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の「このシーンを変えるならどうするか」を考えて、部分的にシナリオを書くという課題。

〇新井:これは、研修でいろいろやってきたからこそできる課題なんです。

〇内藤さん:そうなんですよね。この映画の構成を理解せずに、ただ「こういうシーンなら面白い」ってだけで書いてしまうと、はまらない。シーンごとの“役割”が分かっていないとできないんです。

〇新井:ロジックって、クリエイティブを邪魔するものじゃないんですよね。クリエイティブで“遊ぶ”ために、まずはロジックをはめていく。

例えば、「このシーンは2人が喧嘩する役割」だとロジックが分かっていれば、2人のキャラクターを踏まえて、「どんな喧嘩にすれば面白く描けるのか」というクリエイティブの部分をどんどん遊べるようになる。こんなパターンもあるし、でもこうした方がもっと面白くなるかもって、どんどん発想できるようになるんです。

〇水野さん:まさに“型あってこその型やぶり”。だから、シナリオの技術を、ロジックを、まず学ぶというのがクリエイティブを良くするためには大事なんですよね。

水野さんと内藤さんの今後の展望
シナリオAIのこと、海外展開のこと

*

〇水野さん:今、AIがシナリオを書けるようになりつつありますが、AIが発達したら僕らの仕事がなくなるかって言ったら、そんなことはないと思います。

量産が手軽になるからこそ、クリエイターの個性は勿論のこと、ロジカルに面白いと判断する能力や面白いものを選ぶ力が、技術や知識としてより求められるんじゃないかな、と。AIが普及すればするほど、研修やゼミで学んでいることの価値が上がっていくように思います。だから今のうちにしっかり身につけておきたいなと。

あと、内藤が動いているところではあるのですが、海外展開について。海外のゲームシナリオチームだと、映画の脚本を書いている方が当たり前に参加していて、映画作りのノウハウが活かされています。

〇内藤さん:国や地域が異なっても、ベースにある“面白さ”は共通だと思うので、研修やゼミで学んだことを活かしていきたいなと。

ただ、海外でも通用するゲームを作るためには、レピュテーションリスク()に対応できるマナーや表現などの知識は身につけておかないと。
インターネット上で起こる風評被害など、企業の評判やブランドイメージが低下し、企業経営に悪影響を及ぼすリスクのこと)

例えば、宗教上大切にされている動物を雑に扱うというのは、あってはならないことですよね。そういった国や地域に適した表現を考えていく必要があります。

また日本では、少年や若い子が主人公になることが多いのですが、海外では主人公は大人じゃないと売れない、と言われたりしていて。

〇水野さん:こういった知識も得たうえで、楽しめるものを作っていきたいですね。

〇新井:ゲーム原作のコンテンツが、この先もっと増えていくんじゃないかな。世界中で「おもしろい!」と言われるゲームを、どんどん生み出していってほしいなと思います!

アカツキゲームスさんの公式サイトにも掲載!

今回のインタビューは、アカツキゲームスさんからご依頼いただいて実施することになったのですが、せっかくの機会だからということで、こちらも取材させていただきました。ですので、両社の公式サイトで、両社ならではの視点で掲載しています。

インタビュー後は、アカツキゲームスさんの公式サイトに掲載するキービジュアルを撮影↓

「どんなキービジュアルになったのか」という“答え合わせ”も含めて、アカツキゲームスさんの視点で構成していただいた今回のインタビューの記事も是非ご覧ください。

シナリオ職ROOTSで全員必修のシナリオ研修とは?アカツキゲームスがシナリオ・センターと共にめざす「おもしろい」の共通言語化

そして、記事をご覧いただいたゲーム会社や映像会社などの業界の皆さま。水野さんと内藤さんが実感・報告してくださったことを参考にしていだき、もし制作環境で何かお困りのことがございましたら、お気軽にシナリオ・センターまでお問い合せください。

※ご参考までにこちらの記事もご覧ください。
コミュニケーション力 を上げるシナリオ研修 事例まとめ

プロデューサーやディレクターのかたに向けた研修を実施しています

『シナリオの基礎技術』は、製作に関わるスタッフ誰もが、シナリオを理解する事が必要だと考えて、シナリオ・センター創設者の新井一が体系化した表現技術です。エンタメシナリオ研修ではシナリオライターの育成はもちろん、現場に携わるプロデューサーやディレクターのかたの育成にも使えます。

>>詳しくはこちらの「エンタメシナリオ」のページをご覧ください。

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