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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

作家性

シナリオ誌8月号

熱中症

シナリオ・センター代表の小林です。今日も「暑い!」の一言。東京で37度、山梨、群馬、埼玉 岐阜などでは40度越えとか。
週末から少し和らぐらしいのですが、和らぐだけでここまで猛暑ではないという感じらしいのです。やれやれ・・・。
室内ではエアコン設定28度を推奨され、快適とは言えませんが電力不足なのだから、みんなで我慢しようということなのかと思うのですが、イマイチお上を信じられないので、ついつい「Really?」と勘ぐってしまいます。
テレビやSNSでも、原発再稼働のための方便?という声が多く見られますし、これほど国民に信じてもらえなくなってしまったお上も珍しくないですか。
ま、「信じる?信じない?」は置いておいて、自分を守るために熱中症対策はやりましょう。
食欲がわかなくても食事はしっかり食べる、十分な睡眠が大切で、夜寝る前に1杯の水を飲むこと。お茶ではなく水です。
昨日猛暑の中、プロでもないのにゴルフに出かけたつれあいは、こまめの水分補給と涼しいところでの休憩、首筋などの動脈周りを氷で冷やしながら18ホールしっかり回ったとか。遊びも命がけです。(笑)
今までにない猛暑ですから、週末のお遊びも気をつけてくださいね。

コロナも増え始めて、熱中症で担ぎ込まれる人も増え、病院は大変なのだと看護師の友人は嘆いていました。
人に迷惑をかけないように、自分で行動は考えないといけませんね。

変わらない意識

シナリオ誌8月号に、なぜかふたつの同じ原作のシナリオが載っています。
島崎藤村原作の「破戒」
ひとつは、この7月8日に公開される出身ライターの加藤正人さん(木田紀生さんと共作)の映画「破戒」のシナリオ。
もうひとつは、1962年に大映で市川崑監督が映画化された和田夏十さんのシナリオです。
1948年にも久板栄二郎さん脚色、木下恵介監督、池部良主演で映画化されています。どちらも名作といわれる映画となっています。
さすがに3本の掲載は無理だったのかと思いますが(笑)、シナリオ誌に新旧の「破戒」の脚色が掲載されているのは、とても面白い企画だと思いました。
「破戒」は島崎藤村が初めて書いた小説で、自費出版で世に出ました。
部落民差別を描き、藤村が書かれた明治時代は相当問題になったのではないかと思います。
やさしい青年教師として生徒たちに慕われている主人公の丑松は、父からの部落民であることを決して人に明かさないようにという戒めを守っていたのですが、社会運動家猪子蓮太郎の「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」という言葉に、父の戒めを破って自らの出自を明らかにするというお話です。
ストーリーだけ言うとあまり面白くないかもですが、小説でも映画でも大事なのは主人公丑松の葛藤です。この葛藤こそが心打つのです。

2本のシナリオを読み比べると、作家の視点が読み取れます。
和田夏十さんが、この時どういう思いで描かれたかは定かではありませんが、加藤正人さんは、
「島崎藤村の「破戒」は、1948年に木下恵介監督、1962年に市川崑監督によって映画化されている。いずれも日本映画史に残る名作だ。
「破戒」は、差別に対する悲憤を描いた小説だ。
出版されて110年以上の時が流れた現在も、未だに部落差別は社会に残っている。
それどころか、外国人やマイノリティに対する新しい差別も生まれている。
人間の心から消えない差別意識というものを常に意識しながら、現代にも通じる「破戒」にしたいという想いでこの脚本を書いた。」とおっしゃっています。

人間の尊厳が、軽んじられている時代は今も全く変わりません。むしろ加藤さんのおっしゃるように「新しい差別」も生まれています。
作家の視点をどう持つのか、この二つのシナリオを読むことで、自分の視点を考えることができるのではないかと思います。
折角の学びの場ですので、シナリオ誌掲載の「破戒」を読み、加藤さんの映画「破戒」をご覧ください。
110年前に書かれた小説は、新たなる表現を得て「人間の尊厳」を問いかけます。

今も変わらない差別はどこから生まれるのか。
出身ライター青塚美穂さん、的場友見さんが描かれたドラマ「やんごとなき一族」でも描かれていましたが、選民意識というのはなくならないものです。
さまざまな差別を変えるのは、それぞれの意識です。
国を司る人々の大半が「同性愛者は家庭と社会を破壊させる社会問題」などと思っていることや、某タレント候補が同性婚反対、LGBT差別、敵地攻撃しろと声を大にして演説していることも知っておきたいものです。

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