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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

ゼミ仲間が縁で落語脚本を書くきっかけに/最上奈緒子さん

2021年開催「笑福亭茶光の挑戦!笑いの先陣寄席 特別企画 七茶の会」(右)、2022年1月開催「最上奈緒子の脚本に里光が挑む会」

「脚本コンクールで賞をとる以外に脚本家になる方法はないですか?」
「〇〇(=映画・ドラマ・アニメ・落語など)の脚本を書きたいのですが、どうしたらいいですか?」
――といった、“きっかけ”に関するご質問をよく受けます。

そこで、1つの例として、最上奈緒子さん(作家集団)のお話をご紹介。

最上さんは「いつか落語台本を書きたいなぁ」と言葉にしていたところ、シナリオ・センターのゼミ仲間だった女性脚本家さんから紹介を受け、落語の脚本を書くことに。

その後、2022年1月には自身のお名前が入った「最上奈緒子の脚本に里光が挑む会」が開催。そこで口演されたミステリー落語『そっくり』の脚本を担当されました。

人生が変わるような大きなチャンスに、いつ・どこで出会えるか分からないものです。皆さんも「脚本家になりたい」「〇〇の脚本を書きたい」と口に出していれば、こういう“もしかしたら”があるかもしれません。

こちらのブログでは、落語脚本を書くことになったキッカケの他、シナリオ・センターに入ったキッカケや実際にいま役に立っていること等もお聞きしました。『月刊シナリオ教室 2022年4月号』にも最上さんのインタビューが掲載されますので併せてご覧ください。

※3/27には亀有 藍ホールにて『そっくり』が再演↓

==『そっくり』あらすじ==
終電で寝過ごし、見知らぬ遠い街に降り立った会社員・孝雄。妻・真由美に車での迎えを懇願するが、拒否されてしまった。日常的に自分をぞんざいに扱う妻。社畜状態な上に薄給な会社。考えてみれば、幸せを感じることができない惨めな人生だ。

愚痴をこぼし歩いていた時、初老の男が若い男を殺害する現場を目撃してしまう。逃げ惑うが初老の男に捕まり、石で頭部を殴打され、川に投棄されてしまった。それでもなんとか一命を取り留めた孝雄。命からがら助けを求めたのは、あろうことか自分を殺害しようとした初老の男・鼓太郎だった。孝雄は、頭部を殴打されたせいで、全ての記憶を失っていたのだ。
鼓太郎の一人娘・佳代子に見染められ「山田太郎(仮)」と名付けられた孝雄は、記憶を失ったまま定食屋を営む殺人犯・鼓太郎の家に居候することになり――。

■「いつか落語台本を書きたいなぁ、と言葉に出していたら」

*

落語脚本を書くきっかけはゼミ仲間/最上奈緒子さん『そっくり』

――落語の脚本を書くことになったキッカケを教えてください。

最上さん:「いつか落語台本を書きたいなぁ」と言葉にしていたら、シナリオ・センターのゼミ仲間だった女性脚本家さんから、「笑福亭茶光の挑戦! 笑いの先陣寄席 特別企画 七茶の会」の主催者さんをご紹介いただきました。このことがきっかけで、初めて落語台本を書くことになりました。まさに、言霊です。

――その後どのような経緯で、今年1月に開催された「最上奈緒子の脚本に里光が挑む会」で披露された創作ミステリー落語『そっくり』を書くに至ったのですか?

〇最上さん:前述の主催者様より「1話30分を2本、ミステリー落語で」というご要望をいただきました。

そのうちの1本が『そっくり』という作品です。(『そっくり』は1時間ほどの台本になってしまいましたが……)。

創作ミステリー落語とはいえ、あまり複雑にしないように。当時、韓国ドラマが流行っていたので、記憶喪失ものにしようと。

また、ずっと見つけられたくない人が見つかってしまったら、どんな感情になるだろう?と、以前から気になっていたので、その心理も描きました。

それと、古典の名作、蕎麦の屋台で起こる滑稽話「ときそば」の落語家さんがおそばをすする仕草が好きなので、そのシーンも入れました。こういった要素を掛け合わせて逆算し、ミステリー小説を書く感覚で構成・執筆しました。

そして「笑福亭茶光の挑戦!笑いの先陣寄席 特別企画 七茶の会」には、笑福亭里光さんもお越しになっていました。

このことがご縁となり、今年1月に開催された「最上奈緒子の脚本に里光が挑む会」の中で、里光さんが『そっくり』をお噺してくださいました。落語会開催後に里光さんから「今後もやっていきたい」とのご連絡をいただき、とても嬉しく思っております。

――落語の脚本を書く際、特に気を付けていることは何ですか?

〇最上さん:映像の場合は人物を動かし、行動で分からせたりしますが、落語の場合は、まず、今自分がどういう状況なのかをしっかり話すことが多いんです。今回は、その方法を使いました。

あと、落語の冒頭には「まくら」という、噺家さんが本編に関連することをおしゃべりする導入部分があります。ここである程度説明をする方もいれば、しない方もいる。『そっくり』の台本には「まくら」はありません。台本の中に「今どういう状況なのか」を入れ、アレンジ(削除など)は、落語家さんのご判断にお任せしました。

それと、落語は、視点の切り替えが多い気がします。それを見習ってあえて切り替えを多くいれました。映像で見せられないので、会話のキャッチボールの面白さを重視して、大事なことはセリフを繰り返して印象付けるように心がけました。

先に述べた通りミステリー小説と同じ感覚で構成していますが、回想は使わず時系列のまま書いています。

■「シナリオを勉強したことによって、人生が変わりました」

――シナリオ・センターで脚本を勉強しようと思ったキッカケは何ですか?

〇最上さん:私ごとでお恥ずかしいのですが……「離婚」です。離婚が決まった当時、奈落の底に落ちボロボロになりながら、住んで1年しか経っていなかったマイホームを出ました。

引っ越し車の助手席でぼんやりしながら新居のアパートに向かっていた時、元夫が運転する車とすれ違ったんです。相手は、私に気づいていませんでした。

車がすれ違ったあとに「奈落の底から這い出してやろう。離婚した意味を作るんだ!」と心の中でポジティブ宣言をしました。結婚を機に脚本家になる夢は諦めたのですが、もう一度その夢を追ってみようと。それが、シナリオ・センターに通い始めたきっかけです。

気づけば、毎週張り切って、仕事帰りに表参道へ向かっていました。

――シナリオ・センターで学んだことで、実際にいま役に立っていることはありますか?

〇最上さん:シナリオ・センターで学んでいた頃、アイディアはあっても、それを文字にして最後まで書き終えることが難しかった。特にコンクールの応募作は、最後まで書けず……ということが多々ありました。

ですが、締め切りのある宿題などをこなすことによって、最後まで書き終えることを覚えたと思います。というより、 書き終えなければ何も進まないと気づきました。今でも「書け!」「書き終えるんだ!」など、ブツブツと口の中で唱えながら仕事をしています。

――「シナリオを勉強して良かったな」と思うときはどんな瞬間ですか?

〇最上さん:シナリオを勉強したことによって、人生が変わりました。大げさではなく、人生が好転したと思っています。ひとつの作品が形になった時の感動と喜びは、言葉にできないほど幸せです。

シナリオの勉強をしていた頃、ある方に「書き続ければ道がある」というお言葉をいただきました。その言葉を励みに頑張っていたところ、幸運にもテレビ朝日21世紀シナリオ大賞の最終選考に残り、勉強会に参加する機会に恵まれました。

1年ほどの勉強会は、全てが新鮮で刺激的で、毎回楽しくて仕方がなかったです。「やっぱり脚本家になりたい!」という気持ちが強くなり、思い切って会社を退職しました。無謀な決断だったかもしれませんが、後悔はしていません。こういう「勢い」も大切なんじゃないかな、と個人的には思います。

*     *     *

※シナリオ・センター出身の脚本家・監督・小説家のコメント記事一覧はこちらで。
>>脚本や小説を書く とは/シナリオの技術を活かして

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