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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

トップシーン

大豆田とわ子と三人の元夫1(河出書房新社刊)

豪雨見舞い

シナリオ・センター代表の小林です。昨日はショックなことに、ほぼ書き終わっていた「表参道シナリオ日記」の原稿が消えてしまいました。どこかにあるはずと他人の手も借りてPCをくまなく探しまくったのですけれど、ホント消えてしまった・・・のであります。
時間切れでアップできず、思いがけない形で休載となってしまいました。大変失礼いたしました。
プロに頼んで今朝も探していただいたのですがやはりない。すごくいい話、書いたんだけどなぁ。(涙)
自分の中では素晴らしいできだった、悔しい!悔しい!と思うばかりで、何を書いていたのかは定かに覚えていない、結局大したこと書いていなかったのだと思いますが。(笑)

今、日本列島は全国的に豪雨に襲われています。
特に九州、西日本の皆様は、どれだけ大変な思いをされていらっしゃるのかと思うと、心が痛みます。
シナリオ・センターでは、豪雨被害を受けられた通信生、オンライン生の皆様には、お描きになれる状況までお休みしていただけるようにいたしました。
再開できる状況になりましたら、通信生、オンライン生皆様それぞれのご事情に合わせて、ご対応させていただきます。
なかなか状況的には難しいかもしれませんが、シナリオを描かれることで心休まることもおありかと思いますので、書き続けていただけると嬉しいです。
時間がなければ、頭の中だけでも、この間行ったトップシーンコンクールではありませんが、トップシーンだけ描いてみるというのもありかもしれません。
どうぞ、くれぐれもご自愛ください。

トップシーン

トップシーンコンクールを、先日行い1300篇以上の応募があったことをお話ししました。
ファーストシーンは、脚本家が一番悩むところ。小説でもそうですが、書き出しで読まれるか、観られるかは決まってしまうからです。
しかも、ここで、どん話なのかを期待させ、人物関係を描き、お客様に興味を持たせ、気持ちをつかまなくてはいけません。
なので、大御所たちもトップシーンだけで何日も考えて考えて作ります。

橋本忍「真昼の暗黒」(1956年・映画)
〇犯行現場
    鴨居にだらりとぶら下がっているお婆さんの首吊り死体。
    奥の六畳には、血まみれになって布団から仰向けにのけぞっている爺さんの撲殺死体。
    このすさまじい殺人現場を警察官の一行が黙々と検証している。
    刑事の皆川、手帳のメモに区切りをつけ、検証指揮の大島司法主任へそっとささやく。
大島「(頷く)捜査本部を本署において・・・高浜地区署の全員招集だな」
    写真班のフラッシュ閃く。

向田邦子「あ・うん」(連続ドラマ 1979年)
〇仙吉の家・風呂場
    焚口にうずくまり風呂を沸かしている門倉修造(43)。
    薪を入れ火吹き竹で吹く。
    金のかかったモダンな背広。
    門倉の会社の小使い大友金次(60)がとんでくる。
大友「社長!社長さん。そんなことは自分が」
門倉「風呂焚きは俺がやりたいんだよ」
大友「—」
門倉「湯上り、シャボン、揃っているな」
大友「揃っています」
門倉「夜具、布団、届いた。座布団届いた。火鉢に火」
大友「おこっています」
門倉「洗面器、お、便所に紙」
大友「入ってます」
魚屋(声)「チワース!魚勝でござい」

山田太一「男たちの旅路」(連続ドラマ1976年)
〇ある高層ビルの階段・23階(夜)
    普通エレベーターが使用されているので、階段は幅狭く、非常階段の印象である。
    一人の若い娘が疲れた無表情な顔でのぼっていく。階段の淋しい靴音。

坂元裕二「大豆田とわ子と三人の元夫」(連続ドラマ・2021年)
〇通り(朝)
    ジャージ姿で歩いている大豆田とわ子(40歳)
N「これ、歩いている大豆田とわ子」
    少し歩きづらそうだ。
N「靴の中に小さな石が入ってしまった」
    片足をちょっと振りながら歩く。
N「靴の中に入った小さな石を靴を脱がずに取り出そうと試みている大豆田とわ子」

色々なトップシーンがありますね。何事かが起こりそうな、どういう人物が登場するのか・・・。
新井一は、「映画の時代は、出だしは『張り手』がいいということを言ってましたけれど、テレビの時代は『ネコだまし』です。
こいつ何をやるのかなと疑問を持たせる。
一番最初にびっくりさせるよりも、疑問を持たせてお客様をのせていく。
それが映画とテレビの大きな違いではないでしょうか。」
「画面と日常生活は同じように見えますけれど、違うところに目をつけて欲しい。
小津監督がよくやる手だけれども、混んでいる電車から原節子が喪服を着て降りてくる。
日常の何でもないことなのですが、画面の枠の中に入れると何だろうという疑問が湧いてくるのですね。
みんなが右に向かって歩いているとき、左の方へ歩いていく男が一人いるとこの男なんだ?と疑問を持つ。
そのように画面の中に日常と違うものをどう拾うか、一つの方法です。」(シナリオ作法入門から)

あなたのトップシーンは魅力的ですか。

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