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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

現在未来

七月七日のペトリコール(集英社文庫)

1万人

シナリオ・センター代表の小林です。やれやれ、1万人規模でオリンピックはやるみたいです。
バッハ会長に命も懐も握られている日本はNOも言えないのでしょうか。
それにしても、こうも命がけの上に、盛り上がらないオリンピックは、オリンピック史上ありえないと思えるし、黒歴史として後世語り継がれるでしょう。
私としては、街に人が溢れないことをひたすらひたすら願うばかりです。
だって、観客は「直行直帰」してもらうから安全って、あり得ないと思いませんか。
直行はするかもしれない。けれど、直帰はどうでしょうか。
アスリートが活躍してくれればくれるほど興奮しちゃいますよね、そうしたらやっぱり祝杯あげたいし、祝杯まではいかなくても喉は乾くからお茶くらいは飲みたい。遠くからいらした方はお腹もすくでしょうし。
ちょっと想像しただけでも、付近の飲食店は混みあい、表参道にだって流れてくるのではと・・・皆さんの「安心安全」はどう守れるのか、頭が痛いです。
受講生の皆様はもちろんのこと、スタッフも守らなくちゃいけませんし、7・8月は、シナリオ・センターに関わる全ての方に、ろくでもないお願いをしなくてはならないかもしれません。本当に腹立たしい。

どう考えても中止すべきだと思うのですが、どうしてもやるならすべて無観客にすべきだと思うのです。
安全面でもそうですが、外国のアスリートの方々にとっては、日本人の観客ばかりだと完璧なアウエィですよね。不公平な気がします。
日本は、ホームなので金メダルがたくさんとれると豪語して喜んでいらっしゃる方もおいでのようですが、それってどうでしょうか。
なににつけても、無観客で静かに静かやることがいいと思いますし、やらないのが一番望みです。

七月七日のペトリコール

雨上がりの匂い、ふっとたちこめる得も言えぬ匂い、ほっとする気分になります。
怒りも静まって・・・・(笑)
雨上がり、乾き始めるあの独特の匂い・・・ペトリコールというのだそうです。
ギリシャ語で「石のエッセン」という意味だそうです。
そこから始まる物語「七月七日のペトリコール」(集英社文庫)
脚本家で小説家の持地佑季子さんの新刊が出ました。
出身ライターの持地さんは、映画「管制塔」「空色物語」「くちびるに歌を」「青空エール」「プリンシバル」「青夏」など多くの脚本を手掛けていらっしゃいますが、小説は今回2冊目。
小説デビューの「クジラは歌をうたう」(集英社文庫)も現在と過去の物語が並行して進んでいく面白い設定で、楽しませていただきましたが、今回の「七月七日のペトリコール」は、親友の命日に12年前の自分から電話がかかってくるところから始まる、過去と現在の自分が親友の死の謎を追っていくループミステリーです。
畳みかけるような筆致もさることながら、驚くような展開に、面白さは違うのですが前作以上に魅了されました。

七月七日の命日に親友の部屋で寝ていると、段ボール箱にしまわれていた使えなくなった親友のガラケーに電話がかかってきます。電話は過去の自分からの電話。
目を覚ますと同じ七月七日に戻っており、電話するごとに同じ命日が繰り返されるのですが、高校時代仲良かった友達が一人一人と増えていったり、微妙な変化が現れてきます。
不思議なループを繰り返しながら、過去の自分と連絡をとれるなら、親友の死を止められるかもしれないと、過去の自分に助言をしていき・・・。
17歳の親友と過ごした青春時代を描くことで、必死に親友の死を防ごうとする主人公和泉の気持ち、和泉と柊のキャラクターの違いとお互いを想う深さ、そして、それを取り巻く風太、夏雪、月子、花谷乃のキャラクターがしっかりとできているのは、シナリオから学ばれたからでしょうか。
それぞれの登場人物の姿が、明確に目に浮かび群像劇としても魅力的で、爽やかでありながら次から次へと変わっていく展開が見事です。
12年後大人になった彼らのキャラクターもぶれず、一気に驚くような展開へ持っていくうまさは、さすが持地さんの力量を感じました。
読み終わった日曜日、雨上がりの景色は、ちょっと違うように見えました。

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