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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

茜灯里さん『 馬疫 』 /第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作

==創作をするかたは常に“自分にしか書けないもの”を目指していると思います。今回は、“この人でなくては書けない”と感じさせる作品で賞をとり、作家デビューされた方をご紹介==

今年2月、第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作が『馬疫』として発売。
著者は茜灯里さん(通信本科)。まずは「あらすじ」から。

【あらすじ】
2024
年、欧州での新型コロナ感染拡大を受け、夏季五輪は再び東京で開催されることになった。だが、日本馬術連盟の登録獣医師・一ノ瀬駿美が参加した五輪提供馬の審査会で、突然、複数の候補馬が馬インフルエンザの症状を示し始める。ウイルスの正体は過去に例を見ない「新型馬インフルエンザ」。感染した馬を凶暴にさせてしまう「狂騒型」だった。五輪は無事に開催できるのか。そして新型馬インフルエンザの先に現れる、もう一つの恐ろしいウイルスとは――。

同賞の公式サイトで発表されている選評では、選考委員のひとりである有栖川有栖さんが
<パンデミックのため二〇二四年のパリ五輪ができなくなり、再び東京で開催されることになるが、日本では未知の馬インフルエンザが広がりだす―という〈大胆な嘘〉が勝因だ。その嘘を起点に、作者は専門知識を駆使して物語を走らせる。コロナ禍の初期にこれを構想し、発表される頃はどんな状況になっているか判らないというリスクを背負って書き上げた姿勢はチャレンジング(~選評より一部抜粋~)>と述べています。

茜さんは、獣医師や国際馬術連盟登録獣医師としての勤務経験があり、また、馬術選手としての経験もおもちです。上記の選評にもあるように、ご自身の経験や専門知識を駆使して描かれた本作。

どんな想いで書かれたのかコメントをいただきました。特に小説コンクールで賞をとりたい方・小説家になりたい方は参考にしてください。また、『月刊シナリオ教室 2021年6月号』(5月末発行)に茜さんのインタビューを掲載しますので、併せてご覧ください。

社会派ミステリと理系ミステリの融合を目指して

――日本ミステリー文学大賞新人賞に応募したキッカケは何ですか?

〇茜さん:新聞記者時代から、いつか小説を書きたいと思っていました。

2019年11月に「今の職場の仕事の区切りがあと2年でつくので、1年で小説家デビューし、残り1年で引き継ぎをしよう」と思い立ちました。

小説家デビューの定義は様々ですが、最も一般的なのは「紙の本を商業出版すること」です。そのため、受賞作の出版が確約されている新人賞(中間小説やミステリの長編を募集している賞)に狙いを定めました。

初めての小説が2ヶ月で書き上がったので、「長編を2ヶ月に1作、1年で6作」を目標にしました。2作目の『馬疫』は3月半ばには書き終わっていて()、最初は違う賞に応募するつもりでした。けれど、読んでもらった複数の人に「日本ミステリー文学大賞新人賞向きだ」と言われて、同賞に応募することにしました。

第24回日本ミステリー文学大賞新人賞の締切は2020年5月10日。

――『馬疫』を書く際、どんなことを意識されましたか? 何点かある場合は、列挙していただいて構いませんので教えてください。

〇茜さん:

・科学的な事柄は嘘を書かない(ウイルスの特徴検査の手法は科学論文を参考にする、動物の擬人化はしない)ことに、特にこだわりました。

・社会派ミステリと理系ミステリの融合を目指したので、馬の話ではなく「馬に深く関わった人間たちの話」として書きました。

・本筋がぼやけてしまわないように、主人公には恋愛をさせないと最初から決めていました。

――「馬の描写」で気をつけたことはありますか?

〇茜さん:私は、生まれたばかりの馬、競技や競馬で活躍する馬、馬の老人ホームで老いながらゆったりと暮らす馬、緊急手術の甲斐なく死ぬ馬など、様々な状況の馬を間近で見てきました。それぞれの馬の風貌だけでなく、匂いや鳴き声、感触や体温も生々しく知っています。それらを誇張することなく、忠実に描くことが物語のリアリティも生むと考えました。

日本では競走馬や家畜というイメージの馬ですが、海外ではコンパニオン・アニマル(犬や猫と同じ範疇)として扱われています。大きい身体をしていますが、草食動物なので犬や猫と比べても臆病ですし、群れる動物なので人をリーダーと認めると忠誠を尽くします。

この作品は読者の方から「動物に対する愛情を感じる」と言っていただける事が多いのですが、「自分が登場人物だったら、動物に対してこのように接する」という態度を自然に書きました。動物を「モノ」ではなく「仲間・家族」と思っている人はきっと同じ態度を取ると思うので、そのあたりが共感していただいている部分なのではないかと思います。

「映像を考える癖」は小説を書く時にも必ず役に立つ

――小説を書くとき、シナリオの技術で役に立っていることはありますか? 何点かある場合は、列挙していただいて構いません。

〇茜さん:

・「場面が変わるごとに柱を立てて、人物がどこにいるのか描写してから会話が始まる」ことを心がけました。

・大きな謎以外の小さい伏線を散らして、余さずに回収しました。

・「転」の部分が終わってから、もう一山作りました。

――小説を書きたい “後輩”へメッセージをお願いします。

〇茜さん:「作家になるために一番大切なことは“書くこと”」とよく言われます。当たり前と思うかもしれませんが、「作家になりたいな」と言いながら、何もしない人がそれだけ多いということです。

シナリオの勉強を始められた皆さんは、行動を起こせた人です。面白い作品を書く基礎はシナリオでも小説でも同じですし、「映像を考える癖」は小説を書く時にも必ず役に立つと思います。

私もスタートラインに立ったばかりですが、書き続けなければ作家ではいられないので、皆さんと一緒に頑張りたいと思います。

※シナリオ・センター出身の脚本家・小説家・映画監督の方々のコメントを掲載『脚本家・小説家コメント記事一覧/脚本や小説を書くとは』はこちらからご覧ください。

 

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