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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

ドラマは人間を描くこと、登場人物の生きざまが垣間見えたら成功

そして、生きるノベライズ(TWO VIRGINS刊)

文化を生かす

シナリオ・センター代表の小林です。千葉の台風被害はいまだに解消されず、停電、断水もまだまだ続いているところも多いと聞きます。
修復は進んではいるのでしょうけれど、13億ばかりの予算を出されても、全く足りない、できる範囲ではないような気がします。
素人目に見てもそう思うのに、なぜお上は、困ってもいない人や必要のない買い物には何百億も出すのに、千葉の方々にはなぜあんな少ししか出さないのでしょうか?
「千葉県民は棄民」とおっしゃっているジャーナリストもいらっしゃいますが、「国民は国のためにある」「国のために死ね」と思っているのかと、うがった見方をしてしまうのは私だけでしょうか。
いつの頃からか、人々が他人(ひと)に想いをはせる想像力を持たなくなっている気がします。
団塊の世代より上の人たちは、戦後、食べ物もない貧しさから脱却したい、豊かに暮らせるようにしたいという思いから頑張ってきたわけですが、物の豊かさを目指すあまりに、知らず知らずのうちに精神面を置き去りにしてしまったのではないかと私は思っています。
私もその一人として責任を感じており、子どものシナリオなどに力を入れているのもその反省からでもあるのです。
精神というのは文化から育まれます。
お金、お金の豊かさではなく、文化芸術から心の豊かさ、癒し、優しさが生まれてきます。
残念ながら、いまだにこの国は、文化・芸術に対して力を入れようとしない、昨今はよりそんな傾向になってきています。

奈良桜井に、聖林寺というお寺があり、国宝十一面観音菩薩像がいらっしゃいます。それはそれは和やかなお顔をされていて、一日お顔を見て過ごしたいほどの心を癒してくれる優しい観音菩薩様です。
小さな小さなお寺で、収蔵庫が築60年も経って、ひとたび地震が来たらどうなるかという危うさなので、免震の収蔵庫にしたいと思っているのに、国からは家のリフォームもできないくらいの助成金しか出ず、寄付を募ってもさほど集まらず、とても困っています。
こういうところはたくさんあるのでしょうけれど、この国宝十一面観音菩薩像は、アメリカの哲学者であり美術家のアーネスト・フェノロサに廃仏毀釈にあった中から探し出されて、聖林寺にいらっしゃるのです。
日本の大切なものをアメリカ人がみつけてくれたというのはとても嬉しいけれど、反面「日本人よ!しっかりしろよ!」と言いたい気もしてしまいますが。(涙)

一人の力などいかほどのものでもありませんが、それが集まれば大きなうねりとなって変わっていくでしょう。千葉にも聖林寺も応援したいと思っています。

そして、生きる

WOWOWで放送されていた岡田惠和さんオリジナルの「連続ドラマW そして、生きる」が映画化となり、9月27日から公開となります。
連ドラが熱烈な支持を得て映画化にされたもので、ドラマにはない未公開シーンも盛り込み、映画ならではの仕上げになっているそうです。
ドラマは、一人の人間が紆余曲折の末、強く、幸せに向かって生きていく姿に、毎週感動しながら見ていました。
東日本大震災にあった気仙沼へボランティア活動に参加した交通事故で両親を亡くした主人公瞳子となにか重い想いを背負っているような東京の大学生清隆との出会いから、それぞれに成長していく二人を岡田さんらしい優しい視線で描かれています。
映画も楽しみなのですが、ノベライズも出ました。
「そして、生きる」(TWO VIRGINS刊)
ノベライズは、やはり出身ライターの国井桂さんが書かれていらっしゃいます。
国井さんは、映画「夕凪の街桜の国」やドラマ「隠れ菊」(NHKBSプレミアム)「僕とシッポと神楽坂」(テレビ朝日)などの脚本を描かれていらっしゃいますが、岡田さんの「8年越しの花嫁」「ひよっこ」「雪の華」などのノベライズもされていらして、さすが岡田ワールドを知り尽くしているノベライズを超えた原作本かと見間違うほどの素晴らしい小説に創り上げました。
ノベライズって、なんとなくドラマや映画を「文章にしました」感、どちらかというとプロットの長いものみたいで、面白いと思うものに恵まれませんでしたが、国井さんのノベライズは、ノベライズではない、本当にうまい。
一つの小説として、文章表現もさることながら、登場人物のキャラクターを熟知して心理描写も的確で、読み応え十分の本にしています。
岡田惠和さんの脚本、キャラクターの作り、セリフが素晴らしいからということもありますが、それを超えた小説になっています。
このノベライズは感動ものです。是非とも読んでいただきたい小説です。

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