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シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

意見

内館牧子さん

シナリオは共通言語

シナリオ・センター代表の小林です。「山本先生も僕もシナリオ・センターでシナリオを勉強したのですよね」と爆笑問題の太田光さんが。
「阿修羅のごとく」を見せながら山本むつみさんと太田光さんが向田さんの世界を語る「向田邦子の世界」(BSプレミアム)という特集でのことです。
向田さんの1979年の作品がでありながらちっとも古くないこと、面白さが半端でないこともさることながら、山本さん、太田さんの見識の深さに学ぶことが多くとても勉強になりました。
そして、 太田さん、ありがとうございます。シナリオ・センター出身を表明してくださって嬉しかったです。

今夜は、千代田区の自分史講座の最終日です。
自分史講座と言っても、私はシナリオでお教えさせていただいている。
シナリオの俯瞰で描くという特色を、自分史というどうしても主観的で書いてしまうものにぶつけるという講座なのです。
伝えるということは相手に伝わって初めて伝えたことになるので、どこかの国のように自分勝手に言いたい放題やりたい放題では何も伝わらないのです。
自分史はどうしても自分のことなので、なかなか客観的にはならないものです。
それをシナリオというフィルターをかけるだけで、主観的から客観的に変えることができるのです。
4回にわたってワークショップを入れながら進めさせていただき、皆さんの描き方がどんどん変わっていく姿を拝見していて、一緒にやっている田中と二人で感動。
といっても受講生の皆さんはどう思われたでしょうか、今夜お聴きしたいと思っています。
案外、私の思い込みだけで伝わっていなかったりして・・・泣いちゃう。

意見を言う

先日、内館牧子さんの「不作法シリーズ」のご紹介をさせていただきましたが、読めば読むほど、人間としての有様を問われている感じがして、今年の締めにふさわしい本だなあと思いました。とくに、男の不作法の話が気に入っていて、やたらに人に話したくなります。(笑)
ドラマのキャラクター作りにこれほど役に立つ本はないかもしれません。
内館さんの人間観察の深さこそが、あの内館ドラマの魅力を創っているのだと思います。

本の中に「自分の意見を言わない」と言う章があり、内館さんのデビュー当時の経験談が書かれています。これからデビューする方にとっては、是非とも読まれるといいかと思います。
シナリオは、描けば一発でそのままOKになるわけではなく、本打ち(脚本の打ち合わせ)というのがあり、直しがあります。
最初に創られる台本は、準備稿と表紙に印刷されるように、準備の段階なのです。そこから決定稿へいくまで何稿の直しがあります。何稿で終わるかは本打ちでのやりとりと脚本家の力量にかかってきます。

『私が脚本家になって、何より驚いたことのひとつが、打ち合わせの激しさだった。 脚本の第一稿について、プロデューサー、ディレクターはハッキリと意見を言う。いいと思ったところは認めつつも、ダメ出しも厳しい。
私も最初はひるみ、納得できない意見でも受け入れた。だが、そうやっているとどんどん相手の領地に引っぱり込まれる。理不尽な言い分だと思いながらも、自分自身の意見に100%の自信が持てない私は、新人の頃、大半相手に合わせていた。
すると、著名なベテラン監督が 「君はイエスマンか?」
と吐いて捨てるように言った。さらにだ。プロデューサーに、
「脚本家(ホンヤ)代えてよ。彼女とはできない」 と不機嫌に命じた。
あの時はショックだったし、自分の意見を言わないということは、イエスマンに等しいと気づいた。少なくとも心ある人たちは仕事の場で、そんな相棒は望んでいない。
やっと気づかされた。』(男の不作法より抜粋)
新人でなくとも脚本家にとっての一番のハードルはこの本打ちです。
どこまで自分の意見を言っていいのか、どうすればうまく伝えられるのか・・・新人であれば、自信のなさと不安感でおろおろします。
誰でもです。内館さんですらです。(失礼!)
『「言わないことで守る何か」ばかりではなく「言わないことで失う何か」をも考える必要がある。』と内館さんが結論づけられているように、自分の意見を言うことの意味をしっかりと考えて発言をすればいいのです。
その時には、シナリオを描くときと同じように、相手(プロデューサー、ディレクター)が何を望んでいるのか、なんでダメなのか、何が不足なのか、どう変えればいいのか、しっかりと想像力をフル回転させて考え、自分なりのアイデア、考えをダメもとでも言うことです。
漠然としたダメ出しもあるかもしれません。「なんで」「なにが」を必ず引き出すように話をしましょう。よい作品は、関わる全ての人が惜しみなく知恵を、力を出し合わなければできません。
新人であれ、その中のひとり1人となったからにはきちんと意見が言えるクリエイターとして、また人として自分の意見を持っている、言える人でありたいものです。

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