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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

安藤サクラ主演 映画『0、5ミリ』 を観て/監督が姉という最強姉妹

『月刊シナリオ教室』連載「お宝映画を見のがすな」(出身ライター 髙野史枝さん)よりご紹介

妹が演じ姉が撮る

「『0、5ミリ』(2014/日本/安藤桃子監督)っていう映画は、姉が監督で、妹が主演女優やってるんだよ。」と説明した時、「ふーん、そうなの~」と、軽く流さないでほしいな。ここはひとつ、「えーっ、ホントなの?それってすごい!カッコいいよね!」くらいのリアクションがほしいな。

映画には120年近い歴史があるけれど、世界的に見ても、今まで「姉が監督、妹が女優」という例は少ないと思う。だいたい女性監督そのものが多くないしね。まして「妹が演じ姉が撮る」という劇場公開映画は観たことがない。(インディーズ映画はこの限りではありません)。

映画史上初めて(かもしれない)映画なんだから、ちょっとはビックリしてほしいというワケです。姉に監督としてのキャリアと才能が、妹に主役を張れるぐらいの人気と実力が、そんな2人を認めて製作費を出す人(または会社)があるという3つが揃わなければ成立しないハナシだもの。

しかも今回出来た作品は、なんと3時間16分という長尺なのに最後まで飽きずに観せ、「いやあ面白いわあ。ゼッタイ観なきゃ損!」と言いたくなる見事な仕上がりっぷり。そりゃ「推し」だよね。

 

スーパー介護ガール・サワちゃんカッケー!

介護ヘルパーの山岸サワ(安藤サクラ)は、派遣先で「冥途の土産としておじいちゃんと一晩だけ寝てあげて。」と依頼され承諾する。しかしその晩火事と自殺騒ぎに巻き込まれて職を失い、無一文で住む場所もない流浪の身になる。

サワは生きるため、ワケありおじいちゃんの「おしかけヘルパー」になる方法を発見する。カラオケ店で店員とイザコザを起こす康夫、自転車をパンクさせて回る茂(坂田利夫)、ショッピングモールでエロ本を万引きする義男(津川雅彦)などを見つけ、サワはその弱みに付けこむことで相手の家にヘルパーとして入り込み、居場所と仕事を確保する。

みんな最初はサワを警戒するが、彼女の腕によって生活が快適になる事で信頼感がうまれてくる。そして徐々に自分の思いを打ち明けるようになる…

この映画で創造された「スーパー介護ガール、山岸サワ」像がバツグンにいい。介護技術がある上、料理・掃除・洗濯などの家事に堪能な働き者。話はキチンと聞き、必要に応じて優しくもするが、相手の弱みをズバズバついてビビらせることも平気。無邪気かと思えばしたたかで、暴力沙汰にもひるまない。

介護ヘルパーだから相手の生活に入り込むが、頼るそぶりはなく、自分の力で生き抜いていこうとする力強さにあふれている。…サワちゃんは多面体の「なま身の女」だ。厚みのある女性像が、新しく映画の中に誕生したようで嬉しくなった。ニューヒロインのサワちゃんカッケー!

※You Tube シネマトゥデイ
映画『0.5ミリ』予告編

それぞれの姉妹観

この映画のキャンペーン中の安藤桃子監督に話を聞いた。監督の口からは奔流のごとく、主演女優で妹の安藤サクラ絶賛の言葉が流れ出した。

「初めからこの作品の主演には安藤サクラしか浮かびませんでした。サワちゃんはサクラしかやれません。女優の安藤サクラは誰よりも一番仕事をしたい女優なんです。サクラが実の妹でよかった。デメリットなんて一つもないです。

姉妹は父母以上に強い繋がりがあります。同時代に生き、同じものを見て育ってるんですから。姉である私しか知らないサクラの魅力的な表情も知っています。安藤サクラという女優を一番美しく取れる監督は私です。」

安藤監督はパンフレットの中でも「(サクラは)宇宙一大切な存在です。私が5歳ぐらいのときかな、この子を一生守ると決めて、この子のためなら死んでも構わないとさえ思ったんですね。それ以来、ずっと同じスタンスです。」とも語っている。熱いし半端じゃない。

姉妹愛は親子・兄弟愛よりずっと純粋で強いものなのか…と、思わず感動してしまいそうになるが、ちょっと待て、モノゴトは両面から見なくては。サクラ側から見た桃子はどうなの?

「私は生まれた時から姉(桃子)の作品で、姉がそうなるように仕立て上げたんですよ。小学校高学年のころから“自分が欲しい妹”にしようと繰られていたのかもしれませんね。姉からはこれを見ろ、これを聞けとか…。」

むむむ、これって解釈すると…。

「幼いころから映画監督的な才能のあった姉・桃子は、表現者(役者)としての素地があると見込んだ妹・サクラを刺激(指導)することで役者としての才能を育て、いつか自分の作品で使いたいとヒソカに考えていた。もちろんそのことはサクラにとっても好都合だったから喜んで従い、そして成長した妹は、本当に姉のミューズになり、映画界での最強姉妹が誕生した。」

姉妹の愛情物語なんて解釈は甘っチョロい。安藤桃子監督の「幼いころから素材として妹を見つめ、育てた映画監督魂」を讃えるべきでしょう。

すごい監督魂

もう一つ、安藤桃子監督の監督魂を感じたのは、自分の家族親族を平然と使ったこと。父・奥田瑛二(エグゼクティブプロデューサー)、母・安藤和津(フードコーディネーター)、妹サクラを始めとして、サクラの義父・柄本明、義母・角替和枝を作品にキャスティング。

柄本明など、サクラに手を出す好色オヤジの役を振られていて、サワちゃんのスカートに顔を突っ込んだりしているのだ!念のため言っとくと、安藤サクラは柄本明の息子・柄本佑と結婚してます。つまりサクラは息子の嫁。サスガによーやる…と、感動すら覚える。

普通は映画一家でも「親族は使いにくいし、色々言われるとうるさいから現場に入れない」ものらしいが、そんなことに全然頓着せず、「うまい役者だし話題性があるから使った」と言い切れる安藤桃子監督は「可愛い顔して(女優でもイケそうな美人さんです)肝太い。」惚れました。

映画界への女性の進出がさらに進めば、安藤桃子・サクラ姉妹のように「姉が監督・妹が役者」とか、「妹監督・姉プロデューサー」など、ふたりでタッグを組んで映画作りにかかわるケースが出てきそう。それはまた映画にいろいろ魅力的なプラスアルファーを付け加えるはずだ。桃子監督も「1+1は無限大」とか言ってた。映画界にもっともっと出てきてね、ストロングシスターズ!

※シナリオ教室連載エッセイ2014年12月号<お宝映画を見のがすな>より
次回は7月13日に更新予定

■映画『0、5ミリ』データ

上映時間:196分
製作年:2014年
製作国:日本
監督・撮影:安藤桃子
配給:彩プロ

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