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シナリオや小説についてなど、創作に役立つヒントを随時アップ!ゲストを招いた公開講座などのダイジェストも紹介していきます。

『 おおきく振りかぶって 』に学ぶ/繊細な心理描写で感情移入

マンガにはシナリオ創作に役立つヒントが満載。魅力的なキャラクターとはどんなものなのか。設定だけで面白いと思わせるにはどうしたらいいのか。その答えはマンガにある!シナリオ・センターにてマンガ原作講座を担当する仲村みなみ講師の『マンガから盗めっ!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回取り上げるのは『おおきく振りかぶって』。なぜこの作品に読者は感情移入するのか。その理由や秘訣を仲村みなみ講師はこう読んだ!「スポーツものを書きたい!」と思っているかたは特に必見です。

『おおきく振りかぶって』(講談社)/ひぐちアサ

注目ポイントはキャラクター
「オレらのエースは暗くて卑屈。勝つために、弱気なエースのために。行けオレら!」。繊細な心理描写で「人間の可能性」にエールを贈る高校野球マンガ。

意表をつく「らしくない」キャラクター

今回は、年の初めにふさわしい爽やかな作品を。児童文学の名作「バッテリー」(あさのあつこ作)も凌ぐ名作になる予感。読むべし。

 舞台は埼玉の県立高校。新設された硬式野球部に新入部員たちが集まってくる。主人公の三橋は中学時代にエース投手だったのだが、ものすごく卑屈で自信がない。

というのも祖父が理事長だったため「ひいきで抜擢」され続けたからだ。周囲の冷たい目と苛めの中、試合にも負け続けたが、それでもエースの座を譲らない。三橋は自分のエゴの深さと実力のなさに3年間自己嫌悪し続けてきたのだった。

そのため、常にオドオドとあたりを伺い、すぐ泣きすぐへこむ。あまりのいじけぶりに監督もチームメイトも同情を通り越してイラつく。「おまえ、マジでうざい」と。

物語の軸になるのは、三橋と捕手の阿部の「バッテリー」の成長物語だけど、チームメイトの天才バッター田島をはじめ女性監督の百枝やライバル選手まで、細かな心理や性格がしっかり描かれ感情移入できてしまう。

特に百枝のキャラは強烈。甘夏を片手で握りつぶす握力をもち、ビルの窓ふきバイトで得た金はすべて部費の補助にあて、スポーツ理論や心理学にも何故かめちゃくちゃ詳しい。

バラバラだった子供達の気持が一丸となっていく様子に「ああ~いいわ~」と喜び震える。

※You Tube アニメプレックス
TVアニメ「おおきく振りかぶって」コンプリートBlu-ray BOX CM

 

「人を強くするのは人」というスタンス

三橋って古典的な恋愛少女マンガのヒロインみたいだ。

自分にも本当は良い所があるのに気づかない所とか、「自分なんかどうせ…」という後ろ向きな所とか、恋する(投げたい)気持だけは人一倍強い所とかね。

物語の構造もそう。阿部に努力と才能を認められ、「おまえが好きだ」と言われて、ようやく「本当の自分」を開花させていく。

少年スポーツモノは「強くなるのはあくまで自分の努力」で「相手を倒す」事に主眼が置かれる事が多い。だからこそ、この「人を強くするのは人」というスタンスは新鮮。

心理描写も繊細で、阿部が三橋の手のタコを見て「こんだけ投げても自信持てないんだ。中学のヤツらが(中略)こんなに努力してる男を理解しないままチームから追い出したんだ」と気づく場面はいい。泣けます。

ところで、私の心配は三橋が強くなって「うざく」なくなってしまうこと。どうか最後まで貫き通して欲しい。三振を取り思わずVサインした手をハッとひっこめてビクつく。いつまでもそんな魅力的な人でいてね。

出典:仲村みなみ著『マンガから盗めっ!』(月刊シナリオ教室2006年3月号)より

※【要ブックマーク】漫画やアニメには創作のヒントがいっぱい!今まで掲載したこちらのブログをまとめた記事「漫画・アニメのストーリーを書くには」はこちらからご覧ください。

※シナリオ・センターの書籍についてはこちらからご覧ください。 

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