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しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

舞台演劇が好き な人におすすめな映画・小説7選

皆さん、舞台って観に行きますか?
「行こう行こう」と思っていても、スケジュールがあわなかったり、タイミングを逃してしまったり、ってことありませんか?

でも、舞台って、いいですよね。
観劇の頻度はおいといて、舞台演劇が好きなかた、多いのではないでしょうか。

そこで今回は、
・浅田次郎作品を舞台化している戯曲作家☆金子りつ子講師(戯曲講座担当)
・舞台演劇大好き・事務局代表☆高石えり
――のお二方に、舞台演劇が好きな人にオススメな映画を聞いてみました。

舞台化されてから映画化されたもの、舞台にすればいいのになぁと思うものなどなど、映画6作品(+小説1作品)をご紹介します。

 

①『旅情』(1955年/イギリス)

〇金子講師オススメ

これ実は、映画化より舞台のほうが先なんですよ。意外じゃありません?

映画では、水の都・ヴェネツィアの美しい風景が映し出されます。
これを舞台でやるのはちょっと難しそうですよね。

でも、舞台ならではの工夫がいろいろ施されていて、上演初日から大好評だったようですよ。

工夫の1つが水の音。
例えば、屋外のシーンではざわめいた感じの水の音を使って、水の都・ヴェネツィアを表現。
で、部屋に入った途端、その音がパタッと止む。

こういった音のコントラストを効果的に使っていたようです。

舞台では特に、照明と音響が活きます。どちらかというと照明はわりと意識して上手に使えるかたが多いのですが、「音を意識して書きます!」というかたはそれほど多くはないんじゃないでしょうか。

私自身、音に詳しくなりたくて、音響を勉強して、結果、音響の協会に入ってしまいました(笑)。脚本家が入るのは珍しいみたい。

音って面白いですよ。くぐもった音とか、張りつめた音なんかもあるんです。それに、「その音がどこから聞こえてくるのか」ということも意識すると、奥行きのある舞台になりますよね。

例えば、汽笛の音ひとつでそこがどこか大体分かりますから、わざわざ状況をセリフで説明しなくても観客に伝わります。それに、もしかしたら駅舎やホームのセットもいらないかもしれませんよね、汽笛の音があれば。

そう考えると、音を意識して、音を駆使して作ったほうが断然面白くなると思いません?

映画を観ながら、このシーンは舞台だったらどう見せようか、と考えてみてるのも面白いですよ。

■製作スタッフ・キャスト=原作戯曲:アーサー・ローレンツ/監督・脚本:デビッド・リーン/脚本:H・E・ベイツ/製作:イルヤ・ロパート/出演:キャサリン・ヘプバーン、ロッサノ・ブラッツィ

②『ギャラクシー・クエスト』【1999年/アメリカ】

〇高石オススメ

“舞台演劇好き”の中には、「むかし自分が演劇に関わっていたから好き」という方もいらっしゃるかと思うのですが、いかがでしょうか。そんなかたにオススメするのがこの作品。

かつて、一世を風靡したSFドラマに出ていた俳優たち。月日は流れ20年後、彼らはかつての栄光にすがってイベントをこなす日々を送っていました。

そんな中、ドラマを史実だと勘違いした異星人が、彼らに助けを求めにやって来る。

アラン・リックマン扮するアレックスは元シェイクスピア俳優で、自分のドラマの役回り・トカゲ頭の博士が気に食わない。名台詞「トカゲヘッドに懸けて」もファンの言葉を遮るほど大嫌い。

かつて演じたシェイクスピアの役をくどくど並べたり、喧嘩腰だったのが「役者だろ」と言われると黙ってしまったりと冒頭の方で描かれる“こじらせ具合”が素敵です。

非常にベタかなとは思うんですけど、あんな出会いが一生で1回でもあったらいいなあ、なんて思える映画です。

■製作スタッフ・キャスト=監督:ディーン・パリソット/脚本:ロバート・ゴードン、デヴィッド・ハワード/製作総指揮:エリザベス・カンティロン/出演:ティム・アレン、シガニー・ウィーヴァー、アラン・リックマン

※You Tube
paramount_international
ギャラクシー・クエスト – Trailer

③『ウエスト・サイド物語』(1961年/アメリカ)

〇金子講師オススメ

原作は、さきほどご紹介した『旅情』も書いた戯曲家・脚本家のアーサー・ローレンツ。
『ウエスト・サイド物語』はとにかく、対立と葛藤がはっきり描かれています。

もし、ご自分で書かれた脚本が「平坦だな」「何かが足りないな」と感じたら、対立と葛藤が弱いのかもしれませんよ。

私がこれを舞台化するとしたら、どうするか?

そうですね、やっぱり2人の出会いのシーンに特にチカラが入っちゃうと思います。
この作品は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』がもとになっていて、ポーランド系アメリカ人とプエルトリコ系アメリカ人との異なるグループの抗争の犠牲となる若い男女・トニーとマリアの物語。

映画ではこの2人の出会いのシーンがなんともステキ。特に私はトニー役のかたが好きなので(笑)。
舞台でこの出会いを描くなら、観客が「えー!危ないんじゃないの!?」と不安を感じるような、ドキドキするシーンにしたいですね。

『ウエスト・サイド物語』は宝塚や劇団四季などでも上演されることがありますので、ぜひ映画とともにチェックしてみてください。このシーンは映画ではこうだけど、舞台ではこうだった、などなど、その違いも楽しめると思いますよ。

■製作スタッフ・キャスト=原作:アーサー・ローレンツ/原作・監督:ジェローム・ロビンス/監督・製作:ロバート・ワイズ/製作:ソウル・チャップリン/脚本:アーネスト・レーマン/出演:ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ

※You Tube
shikichannel
劇団四季:ウェストサイド物語:プロモーションVTR:2016

④『パコと魔法の絵本』【2008年/日本】

〇高石オススメ

劇作家・後藤ひろひと氏の舞台を映画化。入院病棟で起こる極彩色のおとぎ話。

「お前が私を知っているだけで腹が立つ」が口癖の大貫は、他の入院患者全員に喧嘩を売って歩く金持ち老人。1日しか記憶が持たない少女パコとの出会いが、大貫を変えていきます。

原作は舞台。待合室、庭、診察室、渡り廊下。現在の息子の部屋。
小さな舞台だったら、これを作り込むだけでも大変ですよね。場転の自由度、スピード感は映像の強みだなあと思います。

映画ではCG映像のキャラクターたちまで登場。本当に自由!

登場人物がすごく極端な人たちなので、デフォルメの参考にもなるかもしれません。

■製作スタッフ・キャスト=原作:後藤ひろひと/監督・脚本:中島哲也/脚本:門間宣裕/出演:役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡

⑤『セッション』(2014年/アメリカ)

〇金子講師オススメ

これは舞台化したら絶対面白いと思います!だって葛藤のカタマリですもの(笑)。
主人公が葛藤すればするほど、観ているこちらは引き込まれていきます。

ジャズドラマーになるため名門音楽学校に入った青年・アンドリューと、完璧主義者の鬼講師・フレッチャー、2人の対立関係も、もう凄い。この関係が凄まじいからこそ、あのラストシーンに繋がるんですよね。

この作品は舞台化しても、「分かりにくいなぁ」ってことはないんじゃないかしら。

例えば、舞台は回想シーンが入れられない。
ここまでが過去のシーンで、ここからが現在のシーンで、また過去のシーンに戻る、となると観客は困惑してしまいます。分かりやすく書かないと観客に伝わらないんです。

でも、映画『セッション』はそういう心配がない。すごく分かりやすいですし、伏線もきちんと張られていて回収もバッチリされているので、どんどん引き込まれていきます。

舞台化するなら、設定の国を変えても面白いかもしれないし、主人公を女性にしても面白いかもしれませんね。
舞台化されることが楽しみな作品です!

■製作スタッフ・キャスト=脚本・監督:デイミアン・チャゼル/製作総指揮:ジェイソン・ライトマン、ゲイリー・マイケル・ウォルターズ、クーパー・サミュエルソン、ジャネット・ヴォルトゥルノ=ブリル/出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ

※You Tube
シネマトゥデイ
映画『セッション』予告編

⑥『ドッグ・ヴィル』【2003年/デンマーク】

〇高石オススメ

私の敬愛する作家・有栖川有栖さんがオススメしていた作品をご紹介。
なんか又聞きみたいですが(笑)、オススメさせてください。

閉鎖的な田舎町ドッグ・ヴィルに、物騒な男たちに追われた美女グレースが迷い込む。物書き崩れの青年トムに導かれ、彼女は村の人間に受け入れられるよう懸命に努力するが……。

この映画、セットがないです。殺風景な黒い地面に、チョークで引かれた平面図が村。プロローグと9幕で構成され、それぞれの章の頭に暗転と章タイトルが入る。

小道具として、人形とカーテンが綺麗に決まります。

なんだかすごく舞台っぽい。
だけど、これは映像。「どこまで映像で描けてしまえるのか」と考えさせられもしました。
でも、舞台にしたら面白いかも。

この映画について書かれたサイトをみてみると、“後味が悪い映画”で取り上げられていたり、私自身、「もうちょっと、オブラートに包んでほしかった…」とも感じるのですが…。

ぜひ観てみてください。

■製作スタッフ・キャスト=監督・脚本:ラース・フォン・トリアー/製作総指揮:ピーター・オールベック・イェンセン/出演:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー

※You Tube
Lionsgate
Dogville – Trailer

番外編・金子講師オススメ小説
『おもかげ』浅田次郎(2017年)

〇金子講師オススメ

これは映画ではなく小説ですが、どうしてもオススメしたいです。

主人公の竹脇正一は商社マンとして定年を迎え、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、集中治療室に運びこます。

家族や知り合いがお見舞いに来るけど、言葉は話せないし、動けない。「あぁ自分は死ぬんだな」と。この描写を読むと自分が死ぬときもこんなこと思うのかなとふと考えてしまいます…。

葛藤が少ない小説って結構あるんです。そういった小説を脚色するときって「どの部分をもっと葛藤させようか…」と悩みます。でも、この作品は、そうやってイジる必要は全くない。

「自分の人生には悔いはない」と思っていたのに、だんだん「もっと生きたい!」と思うようになる。そういう葛藤がきちんと描かれています。

戯曲作家になりたいかたは、いい練習だと思って、この小説を脚色してみてください。
葛藤がきちんと描かれている原作をどう脚色すれば、もっともっと強く葛藤が表せられるのか。
とてもいい勉強になると思いますよ。

また、この作品には、凄いどんでん返しも!

読みはじめは、お見舞いのシーンの繰り返しで「ちょっとなぁ…」と思っていたら、どんでん返しがあって、結局、最後は全部つながっているという、素晴らしい構成になっています。

この小説を舞台化するとしたらどうするか。
こんなことを考えながら小説を読むのもまた新鮮で面白いのではないでしょうか。

金子りつ子講師「超初級実習付き戯曲講座」2018年2月13日開講

〇金子講師

舞台は映像のように見せたいものをアップにできません。じゃあ、舞台では見せたいものをどう印象づければいいのか。

こうやって考えながら舞台の戯曲を書いていると、「映像の脚本を書くときはこうするんだけどな」と自然と映像との違いを考える機会も増えます。映像と舞台のそれぞれの特徴がより鮮明に分かるようになるので、戯曲を学ぶことは映像を書くときにも役立つし、逆もまた同じなんです。

また、『旅情』のときにも言いましたが、舞台の戯曲は照明と音響の2つを意識して書きます。おそらく照明はわりとすぐに意識して上手に使えるようになると思いますので、それプラス「音」ですね。

音響も巧く使えるようになれば、発展性のあるドラマを描けるようになるので、例えばサスペンスも面白いものが書けるかもしれません。

もっと言えば、音を意識するようになるとラジオドラマも書きやすくなるのではないでしょうか。

映像だけでなく、舞台の戯曲も書けるようになれば、今まで気にしていなかったことがいろいろ見えてくると思いますよ。

*     *     *
“演劇好き”高石は昨年、戯曲講座を受講しました。そんな高石に戯曲講座の感想を聞いてみると、

〇高石

今回は、前回のカリキュラムと少し違いますが、「実際に書く」「発表する」というのは一緒です。

アドバンス講座なので、基礎講座・本科・研修科・作家集団といろいろな課程に所属されている方が参加されています。私は戯曲の書き方を習ったことがなかったので、他のかたの作品を聴けてとても勉強になりました。

こちらが伝えたいことを観客に伝わるように書かないと、それを演じる役者の方々にも伝わらないので、現場が困ってしまうんだな、ということを実感しました。

映像の自由さとはまた違う、ナマの魅力が舞台にはあると思うので、戯曲講座に出ることで、舞台の良さも改めて実感できるのではないでしょうか!

あらすじなどの詳しい情報はこちらでチェックしてみては?

※Yahoo!映画サイト『旅情』はこちらから

※Yahoo!映画サイト『ギャラクシー・クエスト』はこちらから 

※Yahoo!映画サイト『ウエスト・サイド物語』はこちらから

※Yahoo!映画サイト『パコと魔法の絵本』はこちらから

※Yahoo!映画サイト『セッション』はこちらから

※Yahoo!映画サイト『ドッグ・ヴィル』はこちらから

※小説『おもかげ』について
①毎日新聞出版サイトはこちらから

②特設サイトはこちらから

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