menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター
背のびしてしゃれおつ

スタッフが行く、表参道スポット
背のびしてしゃれおつ

しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。

時代と寝た映画女優 ジェーン・フォンダ

“時代と寝た女”

「時代と寝た女」と讃えられたスターがいた…って、50代以上のヒトなら誰でも知ってるよね。

そう、歌手で映画スターの山口百惠。

その言葉を聞いたころ「なんだかな~」と強い違和感があったし今でも納得してない。

すごく人気があったのに、それを捨てて引退・結婚したという点と、母親がシングルマザーで超貧乏だったという自分のハードな生い立ちを『蒼い時』(1981 /集英社刊)という自伝で隠さずセキララに書いたというあたりが、右からも左からも支持された理由だろうけれど、まあ、ひとことでいうなら「そこまでのタマなの?」。活躍期間が短すぎてパワー不足アリアリ。

『みんなで一緒に暮らしたら』(2011/フランス、ドイツ/監督・脚本 ステファン・ロブラン)で、久々にスクリーンに登場したジェーン・フォンダを見て、「“時代と寝た女”というなら、ゼッタイ彼女でしょう!」と心の中で叫んでしまった。

山口百惠がせいぜい「時代とペッティングした女」(ペッティングって死語か?キス以上挿入未満ね)なら、ジェーン・フォンダは文字通り時代と寝まくった女だ! しかも体位は女性上位だ!

(一部下品な表現があったことをお詫びします)

映画『みんなで一緒に暮らしたら』/コミューン世代の老後

パリ郊外に住む5人の男女は40年来の友人同士。ジャンヌ(ジェーン・フォンダ)とアルベール夫婦、アニー(ジェラルディン・チャップリン)とジャン夫婦、そして独身のクロードの5人は、それぞれの誕生日に集まって一杯やる親しい仲間。みんな老境に入り、様々な悩みを抱えていた。

ジャンヌは病気が進行し長くは生きられないと宣告されているし、夫のアルベールは記憶が衰え始めている。

アルベールは犬の散歩中に転倒し、娘が勝手に犬を保健所に連れて行くとか、クロードが心臓発作で倒れ、息子が彼を老人ホームに入れてしまうなどの事件も起きる。

独立心の旺盛な5人にとって、自由を制限される生活ほど苦痛なものはない。

人生を最後まで楽しく暮らすためにはどうすればいいかを考えた末、5人は「みんなで一緒に暮らす」というアイデアを実行することに。75歳を超えて初めての共同生活が始まった……。

「高齢になった友人同士の共同生活」というと、なんだか新しい生活スタイルみたいだけれど、実は「思想を同じくするものの共同生活」というアイデアは、1960~70年代にアメリカで流行した「コミューン」と同じ。

ヒッピー文化が生み出したコミューンは、血縁より仲間、平等意識、家事や育児の共有、自給自足などが特徴の生活共同体のこと。若いころにはきっとこんなコミューンの存在を知っていたはずの彼らにとっては、馴染みのある発想だったのだろう。

住んでいる家を提供するブルジョア育ちのアニーは「共同生活はごめんよ。ヒッピーじゃあるまいし」と反対するが、その夫のジャンは「みんな一緒に住めば問題はなくなるさ」と主張して押し切る。

ジャンがNPОの老いたる活動家だったり、ジャンヌがもと哲学教師だったりする設定も伏線としてうまい(若いころは左翼だったはず)。

つまり、「みんなと一緒に暮らす」のは、40年後に訪れたコミューンの実現なのだ。映画のコピーには「仲間と笑顔とシャンパンと素敵な家があればいい」なんて枯れたことが書いてあるけれど、ナニナニそんな生易しい映画じゃない。確かにシャンパンは大量に飲んでるけど、セックスがらみのトラブルはあるわ、喧嘩は起こるわ……。

“時代の子”ジェーン・フォンダ

ジェーン・フォンダ(1937年生まれ)の経歴をたどってみると、まさに「時代の子」だったことがありありとわかる。

ジェーンは私よりずいぶん年上、アメリカの映画女優と日本のしがないライターでは立場が違いすぎるにしても、同じような時代の空気を吸ったものとして、共感を覚えるところが多い。

①権威主義的な父親との対立:
幼いころから権力的で身勝手な父親(ヘンリー・フォンダ)に傷つき、反抗心を燃やして絶縁、自立をする。

②芸術家への憧れと心酔:
親を「権力的俗物」として反発すると、いわゆる「ゲージツカ」(っぽい)タイプに幻想を持つものだ。フランスの映画監督、ロジェ・バディムとの結婚はまさにそれ。

彼は監督としての才能はあったかも知れないけれど、麻薬を常用して妻ジェーンに3Pを強いる、とんでもない男。28歳で結婚したけれど、8年後に離婚したのは正解ですね。

ジェーンが主演のバディム映画で一番有名なのがエロチックSF『バーバレラ』(1968)という怪作。内容は???だけれど、ジェーンのセクシーアイドルとしての魅力は際立っている。

③活動家に:
ベトナム戦争真っ盛りのアメリカで、ジェーンは反戦活動にのめりこんでいく。

活動家トム・ヘイドンと1973年に結婚し(活動していた17年間続く。結局離婚したけど)何度も逮捕されるなど活動歴はハンパじゃない。

このころの映画『ジュリア』(1977/フレッド・ジンネマン)『帰郷』(1978/ハル・アシュビー)『チャイナ・シンドローム』(1979/ジェームス・ブリッジズ)『9時から5時まで』(1980/コリン・ヒギンス)などの映画は、ジェーンの鋭い政治意識と演技力のバランスがよくて、今でも大好き。

④父親との和解:
『黄昏』(1981/マーク・ライデル)という夫婦愛と親子の和解がテーマの作品を企画し、実際の父娘の役を演じた。親子が映画出演で長年の確執を解消するなんて、映画人らしくていいね。

⑤大富豪との結婚:
1991年にCNNの創設者で大金持ちのテッド・ターナーと結婚。きっといろいろ疲れちゃって、しばらくノンビリしたかったのかな。疲れ休めが終わったら、案の定離婚。

ふう、ご苦労様…といいたくなるキャリア。ターナーとの離婚のあとに書かれた自伝『わが半生 上下巻』(2006/ソニーマガジンズ刊)には、「私は、ついに、あるがままの私になったのだ」と書かれている。

まさに実感なんでしょう。彼女の人生は、自立のために必死で活動した戦後女性史とかなりの部分重なる。

時代と格闘して(寝て)、それを仕事に反映したところが素敵。そして75歳になったいま、「最晩年をどう過ごすか」というテーマの映画に出演するなんて、スジ通っててカッコよすぎですよジェーン姐さん!

次回は2月第1金曜日に更新予定

映画『みんなで一緒に暮らしたら』データ

上映時間:1時間36分
製作年:2011年
製作国:フランス/ドイツ
監督・脚本:ステファン・ロブラン
配給:セテラ・インターナショル / スターサンズ

高野史枝さんによるシネマエッセイ『恋恋電影』より

「月刊シナリオ教室」にて、好評連載中の出身ライター・高野史枝さんによるシネマエッセイ『お宝映画を見のがすな』から、古今東西のオススメ映画を鋭いツッコミとともにご紹介。ものの見方や視野を広げたい、視点を変えてみたいというかた必読です!

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ