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『 勇者ヨシヒコ 』に学ぶシナリオの勉強法:必要ないけど面白いシーン

「そこそこ面白い」から「飛躍的に面白い」シナリオにするシナリオの書き方を、シナリオ・センター講師浅田直亮著『シナリオパラダイス 人気ドラマが教えてくれるシナリオの書き方』(言視舎)からご紹介。
今回はテレビドラマ『勇者ヨシヒコ』を参考に、必要ないけど面白いシーンの書き方を学んでいきましょう。「このシーンは必要なのか、それとも削った方がいいのか…」と悩んでしまうかた、必見です!

そのシーンは必要か必要ないのか?

こんにちは。エンゼル浅田です。あなたのシナリオをパラダイスに導きます。

このシーンが必要なのか、それとも削った方がいいのか、分からなくて……と悩まれる方が、たくさんいらっしゃいます。

実は、必要か必要じゃないかなんて、どうでもいいのです。それよりも、そのシーンが面白いか面白くないか、です。

確かに「このシーンは必要ない」などと言う人はいます。でも、それは面白くないからです。「必要ない」という言葉に惑わされないようにしてください。

言っている人自身も勘違いしているのですが、面白くないから「必要ない」と感じてしまっているだけです。面白いシーンにさえなっていれば「必要ない」などとは言わないでしょう。

また、あえて「必要」なシーンを描かないこともあります。そのシーンを省略することで観客や視聴者に想像させて引きこむのです。必要だから描く、必要ないから描かないというわけではありません。

そもそも必要か必要ないか悩むということは、どういうことでしょう?

1つは、ダメなところや悪いところをなくそうとしているからではないでしょうか。

必要ないところは描かない、必要ないのに描いているのは間違っているという発想です。そして、間違っているところをなくしていこうというわけです。

たとえば、あなたが必要か必要ないか悩んでいるシーンを削ったとして、シナリオが面白くなりますか?

あるいは、そのシーンを描いたからといって、すごく面白くなりますか? 大して変わらないはずです。

大して変わらないのに悩むのは、ダメなところや悪いところをなくそうとしているだけなのです。

逆に言うと悪いところやダメなところをなくしても大して面白くはなりません。欠点のないシナリオにはなるかもしれませんが、欠点をなくせば面白くなるわけではないのです。

何度も言い続けてきましたが、ダメなところや悪いところをなくそうとしても面白いシナリオにはなりません。

ストーリーでは面白くならない

もう1つは、ああなって、こうなってとストーリーを考えてストーリーを書こうとしているからだとも考えられます。

必要か必要ないかって何にとってでしょう?

ほとんどの場合、ああなって、こうなってというストーリーに必要か必要ないかと考えているのではないでしょうか。

これも何度も言い続けてきましたが、ストーリーでは面白くはなりません。そこそこにはなりますよ。でも、そこそこにしかならないのです。

もし、ストーリーに必要なシーンだけ描いていったら、どんなシナリオになるでしょう?

あらすじみたいな、無駄のない、よくまとまっている、けど、ちっとも面白くないシナリオになるでしょう。20枚シナリオで1時間や2時間や、場合によっては連ドラになりそうな、あらすじみたいなシナリオを書いてはいませんか?

ね? 必要か必要ないかなんて、どうでもいいでしょ? 

というか、必要か必要ないかと考えれば考えるほど、面白いシナリオが書けなくなってしまいそうです。

そんなことに費やす時間があったらシーンを面白くすることを考えてみて下さい。シーンを面白くするのはキャラクターと葛藤です。特にキャラクター。そのキャラクターならではのセリフや行動やリアクションです。

もちろん、たとえ必要なシーンであっても面白くなければ、それは、必要だけど面白くないシーンになってしまうわけです。必要だろうが必要なかろうが関係ありません。どんなシーンも面白くしようと考えてみてください。

さらに、あえて必要ないかもしれないけど面白いシーンを考えて描いてみてください。

特に20枚シナリオでは「そんな余裕あるかあ!」と思われるかもしれませんが、ダメなところや悪いところをなくそう、ストーリーを書こうとして、こじんまりまとまってしまう枠をブチ破る起爆剤になるはずです。ぜひぜひ、お試しください。

 

『勇者ヨシヒコ』シリーズ

今月は、ついに『勇者ヨシヒコと魔王の城』と『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』を取り上げます。

いわゆる勇者ヨシヒコ・シリーズですが、山田孝之さん演じるヨシヒコが、宅麻伸さん演じるダンジョー、木南晴夏さん演じるムラサキ、ムロツヨシさん演じるメレブとともに、魔王を倒すためや、悪霊を封じ込める鍵を探すために旅をするロードムービーで、立ち寄った村々でトラブルに首を突っこんだり、ハプニングに巻き込まれたりするドタバタ・ナンセンス・コメディです。

オープニングタイトルでも「予算の少ない冒険活劇」と出てくる通り、たとえばヨシヒコが旅立つシーンは馬に乗っているかのように揺らした上体だけを映していたり、襲いかかってくる化け物がぬいぐるみで、キャストが首に噛みつかれたかのように演じたり、ムラサキの肩の小鳥の声が木南さんや山田さんの下手な腹話術だったりと、トホホ感満載です。

あまりの下らなさに、放映している時は1週間おきだったので、ものすごくハマリました。が、今回この原稿のために、ほぼ毎日続けて観直すと、正直疲れました。ご覧になるときは、せめて2日おきぐらいがオススメです。

必要ないけど面白いシーンの代表がメレブの呪文です。

もともとメレブは魔法使いですが、最初は人の鼻の穴を上に向けブタ鼻にするというハナブーという呪文しか知らず、ほぼ1話ごとに1つ呪文を習得していきます。

これが、無性に甘いものが食べたくなるスイーツ、どんなに不味い料理でもイケメン面と毒舌があれば美味しく感じさせるカワゴエタツヤー、顎を前に突き出させシャクレにするシャクレナ、初恋の人の名前を思わず叫んでしまうハツコインなど、とにかく馬鹿馬鹿しいものばかり。

天女から羽衣をもらう時にハナブーを使ったり、噛みついてくる化け物をシャクレナで噛み合わせを狂わせて撃退したりと有効に使われることもないわけではありませんが、ほとんど無意味です。

『悪霊の鍵』の第11話(最終話)でも、ムラサキの何が起こるか分からないパルプンテという呪文で、メレブのレベルが一気に20上がります。

「最強の攻撃呪文、手に入れたろ」「いま覚えた呪文をかけまくってください」「よかろう」と呪文を披露しますが、北野武のモノマネをしてしまうタケシズン、ウンコがしたくてたまらなくなるダイベインなど、やっぱり下らないものばかり。やがて日が沈み月が出て、最後の呪文になります。

メレブはヨシヒコに魔法をかけ「大きく息を吐いてみろ」と。「まさかヨシヒコ、火噴くとか!」「危ない!離れろ」とムラサキやダンジョーが期待しますが、ヨシヒコがハア~とやっても火は噴きません。メレブが「どうや?」と尋ねるとヨシヒコが「ミントの香りがします」と答えます。「ケアブレス、そういう呪文だ」と得意顔のメレブですが、もちろん何の役にも立ちません。

ストーリーには関係ない面白いシーン

もう1つ必要ないけど面白いシーンとして4人を襲う盗賊のシーンがあります。

毎回ではありませんが、オープニングタイトル前にゲストが演じる盗賊が現れ、4人に食料や金を要求してくるパターンになっています。

たとえば『魔王の城』第5話では沢村一樹さん演じるカッコつけ盗賊。毒ナイフをカッコつけて自分で舐めてしまい倒れます。

『悪霊の鍵』第3話では青木崇高さん演じる毒霧盗賊。プロレスラーのグレート・ムタの物真似をしながら毒霧を噴きますが、向かい風だったため自分で吸い込んで倒れます。

『魔王の城』第6話では古田新太さん演じる恐妻家盗賊。妻も現れ、結局「ゴミ捨てて赤ん坊寝かしつけて洗い物して掃除終わったら帰ってくるから、それまで待ってろや!」と去ります。

この盗賊は第8話でも出てきて、ベッドの下に隠してたエロ本が見つかり、妻に土下座させられ「エロ本買って、ごめんなさい」「ていねいに袋とじ開けて、すみません」と言わされます。

この各話の冒頭の盗賊たちとの戦いがタイトル後のストーリーと関係があるかというと、まったくありません。

勇者ヨシヒコ・シリーズはドタバタ・ナンセンス・コメディなので自由度が高く、ほかのジャンルでは、ここまでは難しいかもしれません。

ただ、必要か必要ないかではなく、シーンを面白くする参考にはなると思います。特に、あまりの下らなさに隠されていますが、登場人物のキャラクターならではのセリフや行動に注目してみてください。

これで、あなたもパラダイス!

ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズデータ

『勇者ヨシヒコと魔王の城』
2011年7月~9月(全12回)
テレビ東京金曜24:12~24:53(41分)

『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』
2012年10月~12月(全11回)
テレビ東京金曜24:12~24:52(40分)

脚本・監督:福田雄一
チーフプロデューサー:岡部紳二
プロデューサー:浅野太 武藤大司 手塚公一 松本彩夏

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