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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

BUTTER~柚木麻子の視点のすごさ

柚木麻子著「BUTTER」(新潮社刊)

作家の目

シナリオ・センター代表の小林です。今日はまさに五月晴れ。朝、寄り道して、新国立美術館へいきましたが、まあ、すっごい人。ミュシャ展と草間弥生展どちらも長蛇の列。GWに私が行ったときはこんなではなかったのに。びっくり。
その横を通り過ぎて「太平洋展」へ。歴史ある展覧会で展示の数がハンパないので全部をじっくり見たら半日かかりそうなので、お目当てを拝見して失礼しました。すみません。
観終わってでてきたら、長蛇の列はどんどん長くなっており・・・、鑑賞なんてできるんでしょうか。

 

出身小説家柚木麻子さんの新作「BUTTER」。圧倒的な迫力に押されて読み終えました。
この小説「BUTTER」は、首都圏連続不審死事件をモチーフにしています。
婚活サイトで知り合った複数の男性からお金を奪い、殺害した罪に問われた梶井真奈子を、週刊誌記者の里佳が拘置所に通いインタビューを重ねていくうちに、梶井の語る「食・バター」に里佳本人もまわりの人々も、精神的にからめとられていき、そして・・・というお話です。
結婚詐欺殺人のお話を「食」にスポットを当てながら、女性に対する社会の目、偏見を見事に織り込んだ柚木さんの視点に心底私自身もからめとられました。 

作者の腕

シナリオ・センター出身の小説家は、赤川次郎さん、乃南アサさん、鈴木光司さん、大山淳子さん、柏田道夫さん、土橋章宏さん、原田ひ香さん等々キラ星のようにいらっしゃいますが、どなたの作品も文章から映像がすーっと浮かび上がります。
柚木さんも、もちろん例外ではなく、力強いぐいぐい引き込まれる筆力に、想像力をかき立てられて、登場人物の顔や口調や仕草まで浮かびあがります。
柚木さんは、最初は脚本家を目指されていたのですから、シナリオも書いていただきたかったですね。
「嘆きの美女」や「ランチのアッコちゃん」は、NHKでドラマ化されましたが、ご自分の原作の脚本を書いてみたいとは思われなかったのでしょうか。
そういえば、「嘆きの美女」の脚本は、センター出身の李正姫さんでした。
どこかで誰かとつながっているんです、シナリオ・センターは。 (笑)

朝日新聞に柚木さんのインタビューが載っていました。
「BUTTER」で書いていた料理の適量と小説の適量について、どちらも難しいとお話をされていました。
柚木さんは「2008年にオール読物新人賞を受けた後、編集者から『毎月200枚は書くように』と言われてノルマのように枚数をこなしていた時期があった。去年頃から自分の適量がやっとわかってきました。
小説が何かわからず描いていた時期があったけれど、それは無駄ではなかったと思います。」と語っていらっしゃいました。

がむしゃらに書いてきた時期があったからこそ、つかめたもの、わかったものがあったのだと思います。
シナリオ・センターで学ばれている間、柚木さんのようにがむしゃらに書き続けることこそ、決して無駄にならない、むしろ大事な時間なのではないでしょうか。

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