浅はか
シナリオ・センター代表の小林です。今日は難民の日です。
日本では、自分の国へ帰ったら政治的に命が危険な人しか受け入れないらしいので難民申請をしても2.2%くらいしか認められないのだそうです。
分相応の生活を良しとし、みんな違うことを認め合い、他人の芝生を青く見なければ、戦争も起きず、誰もが自分の国で健やかに暮らせるのにね。
「進次郎人気」が凄いのだそうです。
自民党は、この人気に都議選も参議院選も安泰だと思って、にやにやしているとか。はあ~?
私は、小泉大臣が100年の計でお米だけでなく災害なども含めて考えているのかどうか、備蓄米を出したことが農業従事者の方々にプラスになっていくのかどうか、目の前のことだけでなく考えてくれる人であって欲しいと思っていますが・・・どうかなぁ。
亡くなったジェームス三木さんの言葉がよみがえります。
「物事を考えるときは、人に惑わされないように、世の中の流れに飲み込まれないように。
これはライターの基本的な立場です。
相対的にモノを見ないとね。片っぽだけで見ていたんでは、物書きにはなれない。
奥さんとケンカしたら、奥さんの側に立って考えてみる。実際はそんなことできませんけどね。
よく考えてみると、向こうの言うことがわかってくる。
ものの考え方は、世の中に流されないように、自分がどう思うかが大事です。
これが、シナリオライター、ものを書く人の基本です。
テロが正しいなんて言うつもりはないけど、争いには必ず双方に正義があります。
夫婦ゲンカもそうでしょう。夫も妻も、自分が正しいと思っている。
戦争も同じで、両方に正義がある。宗教の正義だったり、倫理の正義だったり色々ですが、簡単には割り切れない。」
シナリオライターだけでなく人として生きていく指針のような気がします。
自分で考えて、ホンモノがどうか見極めるチャンスがまずは参議院選でしょうか。
人間だからこそ
ジェームス三木さん続きです。今更ですが、色々なことを教えてくださっていました。
「人間はこういう時になんて言うのか。いろんなセリフがありますが、ありきたりの言葉で書かないこと。
テレビを見ていればわかるでしょう。人間はほとんどのセリフで嘘を言う、大げさに言っている。「あーら、可愛い赤ちゃんね~」って、絶対そうは思ってない(笑)。
そういうセリフを書いてください。
「実はこの人、裏では反対のことを思っているな」というセリフがほしい。
人間は真っ当にモノを言わないものなのです。どうでしょう、お世辞とか遠まわしとかも含めると、普段の言葉の3分の1くらいは嘘をついていませんか?
言葉というのは、自分が思った通りには伝わらない。
私たちの普段の会話は、25%くらいしか相手に伝わってない。
文章にして50パーセント。名文でやっと60%です。喋り言葉なんて伝わらない。
伝わったと思っていることが間違い。「伝えたはずじゃないか」「いや、聞いてない」、このトラブルは結構ありますね。
戦争の元も言葉ですけどね。
争いの元は被害者意識から始まる。人は自分が加害者であることに気づかない。
だから権力者は「日本はこのままだとひどいことになるよ」と被害者意識を駆り立てて戦争に持っていく。権力者の常です。
でも相対的にモノを見ると違ってくる。
相対的にモノを見ることが大事です。
セリフで説明するのが一番愚かしい。
セリフは逆を言った方がいい。「こいつ、こんなことを言ってるけど、たぶんそうはならないぞ」、それが見る人にとってドラマの醍醐味です。
橋田壽賀子さんのドラマは、1時間で大体18シーンくらいしかありません。
橋田さんのドラマには風景は出てこないでしょう? 飯食ってるところとか、食堂とか。同じ人が集まっている。でも退屈しない。それは、自分の身に染みるセリフ、会話があるから。
橋田さんは、同じことを形を変えて3回くらいやる。
橋田さんの考え方は、テレビを見る人は連続ドラマの3回に1回くらいしか見ないから、忘れるから、ていねいに描いた方がいいと。これもひとつの考え方ですね。
私には、ちょっとそれは我慢できないですが。同じことを繰り返したくない。映画なんか特に、省略して省略して、間は観る人が埋めるんだという考え方です。
人間には喜怒哀楽の感情があります。
喜びと楽しみはどう違うかわかりますか? 喜びは達成感。「東大に受かった」とか「甲子園に出られた」というような、やったーっていう気持ちが喜びです。
楽しみとは、まだ起きていないことに対する期待感。
達成感を目標にすると人生辛くなります。期待感は外れてもいい。宝くじを持っている間は楽しかったじゃないかって考えることもできる。
入院する人は退院する楽しみがある。刑務所にいる人は出所する楽しみがある。離婚した人は再婚する楽しみがある。心の中に楽しみの種を持っている人が幸せなのです。今、どんなに不幸であってもね。
ドラマもそう。「こうしたら、こうなるぞ」という楽しみの種を感じさせる。
これがドラマを見る楽しみです。
綺麗事ばかりじゃないんですよ、人の足を引っ張る楽しみとかね。私も内心では、この中からシナリオライターが出てこないように願っています(笑)。私だってそうそう追い出されたくないからね。
落とし穴を掘る楽しみもあれば、テレビを見てタレントを罵倒する楽しみもあります。
喜びより楽しみが大事。「この次どうなる?」という楽しみを、お客さんに伝えられるホンを書いてほしいと思います。
人間ってこういう面白いところがある。不思議で奇妙なんです。そういうシーンを、僕はいつか書きたいと思っています。
皆さんも、普段の生活の中からそういう発見をしてください。
人間の不思議さ、訳のわからなさが面白い。
こういうキャラクターですってハッキリ言っちゃうのは論文書いているのと同じでつまらない。
ドラマというのは、よくわからないところがあって、それを視聴者が想像して、視聴者の数だけ結論がある。」
ジェームス三木さんからはたくさんのことを教わりました。ありがとうございました。
シナリオ・センター天国校には新井も後藤もおりますので、遊びに行ってくださいね。
ドラマ誌7月号にも、ジェームス三木さんと橋田壽賀子さんの対談が載っています。