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【脚本初心者必読】シナリオでテロップ(タイトル法)を入れるとき

「ドラマや映画でよく使われているから、自分のシナリオでもテロップ(タイトル法)を入れたいな」ということで、むやみに入れてしまうと逆効果になる場合があります。タイトル法の基本的な書き方とともに、効果的な使い方をご紹介。

このコーナーでは、「自分にはシナリオを書く才能がないかも……」と悩んでいるかたへ、面白いシナリオが書けるようになるちょっとした“術”を、シナリオ・センター講師・浅田直亮著『いきなりドラマを面白くする シナリオ錬金術』(言視舎)&『月刊シナリオ教室(連載「シナリオ錬金術」)』よりご紹介いたします。

字幕タイトルの効能

タイトル法を使ったことがありますか?タイトルといっても題名のことではありません。字幕タイトルです。

外国映画を観ると、セリフの日本語訳が画面の下や横の端に文字で出てきますよね。あるいは古いサイレント(音声のない)映画の時代では、セリフは文字を映していました。たとえば、追いかけられている映像があって、次に「助けて!」と画面に文字だけが映るわけです。これが字幕タイトルです。

もちろん、みなさんが書くシナリオは基本的にはセリフは日本語ですし、トーキーですからセリフは人物がしゃべってくれます。セリフを字幕タイトルにすることは、ほとんどないでしょう。(セリフが外国語の時などに日本語訳をタイトルで入れることはありますが)

でも、たとえば『1945年8月6日 午前7時30分』とか『数日後』というタイトルや、『渋谷センター街』というタイトルを入れることで、時間や時間経過を伝えたり、舞台となる場所を伝えることができます。

いや、それなら映像で、たとえば主人公が読んでいる新聞と時計で日時や時間を、前のシーンでつぼみだった桜が満開で散り始めている描写で数日経った時間経過を、渋谷センター街の入り口の看板を出すことで舞台となる場所を、それぞれ伝えることだってできるじゃないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。

その通りです。基本的には、まずはタイトル法ではなく映像で描写し伝えられないかと考えてみてください。

そもそも文字を読むというのは知性を働かせるものです。映画やテレビドラマは基本的には感情に訴えようとしているので、タイトルは、やや異質なものになります。感情移入しようとしていた観客や視聴者は、ちょっとクールになり感情的に入り込むのをやめて、タイトルを読むわけです。

じゃあ、さっきの例でいうと、新聞に載っている日付を読むのも文字を読んでいるわけで、タイトルを読むのと、どう違うんだということになります。映像の中に文字が映っているのは、ある意味、自然です。たとえば新聞の日付を読むことは日常生活でも普通にあります。

でも、タイトルが入るということは日常生活では、あり得ません。それだけ不自然というわけではありませんが、これは映像ですよという意識を呼び覚まします。感情移入して、映画やドラマの世界に入り込もうとする気持ちには水を差すことになりますが、ドキュメンタリーや情報番組を観ている感じに近くなり、リアリティーは増します。

つまり、タイトル法を使う方が、観客や視聴者は、よりクールになって、少し距離を置き、考えながら観ることになります。なので、観客や視聴者を感情移入させようとしている時にタイトル法を使うのは逆効果です。あえて観客や視聴者に、ちょっとクールになってもらい、一歩引いた感じで考えてほしいという時や、ドキュメンタリータッチで描きたい時に有効です。

というわけで今回は、頭をクールにする冷えピタの術!

タイトル法の基本的な書き方と“緊張感を高める”使い方

実際の例を観る前に、タイトル法の書き方からお話します。というのは、基礎講座では必ずタイトル法の書き方の話をしているはずですが、とても質問が多いのです。

まず書き方は2種類あります。一つは映像に(外国映画のセリフの日本語訳が入るみたいに)タイトルが入るパターン。これはト書に書きます。

〇中田家・庭(朝)
   中田が竹刀の素振りをしている。

   タイトル『1945年8月6日 午前7時30分 広島』
   素振りをやめ汗をふく中田。

もう一つは映像と映像の間に文字だけの画面が(古いサイレント映画のセリフの画面みたいに)入るパターン。これは文字だけの画面を一つのシーンとして考え、柱を立てます。

中田家・庭(朝)
   中田が竹刀の素振りをしている。

〇タイトル
   『1945年8月6日 午前7時30分 広島』

〇中田家・台所(朝)
   正子が朝食を作っている。

よく、この2種類の書き方をごちゃ混ぜにしている人がいます。映像に文字が入るパターンか、文字だけの画面が入るパターンか、しっかりイメージしてからタイトル法を使ってください。

ではでは、タイトル法を上手く使っている実際の例を観てみましょう。

まずはテレビドラマ『太陽は沈まない』の第1話。冒頭、滝沢秀明さん演じる主人公・真崎直の剣道の合宿先で、優香さん演じる伊瀬谷亜美との出会いのエピソードなどがありつつ、その1週間後の4月13日に主人公の母親が死んだと告げられます。

そして、メインタイトルあけに『4月13日 午前7時40分』というタイトルが入ります。描かれているのは主人公の家族のいつも通りの朝の光景です。

以降、『午前11時45分』『午後1時10分』『午後3時20分』というようにタイトルが入っていきます。描かれているのは主に主人公と亜美の初デートです。でも、タイトルが入るたびに、母親が死ぬんだぞということを思い出させてくれます。

『午後9時40分』主人公の家では母親が帰ってこないので、何かあったのかと騒いでいます。そこに主人公が帰宅します。「母さん、何か言ってたか?」「別に」みたいなセリフのやり取りがあり、ここで急にタイトルが『9時41分』と1分刻みになります。映像は自分の部屋のベッドでゴロンと横になっている主人公です。しかし、タイトルが1分刻みになったことで、いよいよ母親が死ぬ瞬間が来るんじゃないか?と一気に緊張感が高まります。

『午後9時42分』から手術室の混乱しているような様子が短いフラッシュの組み合わせで伝えられ『午後9時43分』でピーという機械音と母親が死亡した瞬間の顔が映されます。

シーンとしては主人公を追いかけ、母親は描かれませんが、タイトル法を使うことで母親が死ぬことを常に意識させ、さらに時間経過によって緊張感を高めているのです。

タイトルを入れることドキュメンタリータッチに

映画『13階段』ではタイトル法を使うことでドキュメンタリータッチにする効果を上げています。

特に『東京拘置所 死刑囚舎房』『死刑囚 樹原亮』といったタイトルを入れ、死刑制度について解説するナレーションが入り(実は石橋蓮司さん演じる刑務所長がテレビ取材を受けているという設定)、『愛媛県松山刑務所』というタイトルが入る映画の始まりは、まさにドキュメンタリーを観ている気分にさせられます。

みなさんに、ちょっと注目してほしいのは、この『愛媛県松山刑務所』や途中で入る『千葉県中湊郡』といったタイトルです。

実はドラマとしては特にどうしても松山だったり中湊郡であったりする必要はありません。ただの刑務所で十分ですし、描かれている場所が刑務所であることは映像を観れば分かります。つまり特にタイトルを入れる必要はありません。

でも、おそらくは実在すると思われる場所のタイトルを入れることで、よりドキュメンタリータッチを強くする効果があるのです。同じような使い方は、映画とテレビドラマになった『海猿』でもありました。

たとえば巡視船が海を走る映像に『第7管区 北九州沖洋上 巡視船PJH06ちくぜん』というタイトルが入ります。第7管区といわれても多くの観客や視聴者にとっては具体的にどこが第7管区なのか、よく分かりませんし、巡視船の名が『ちくぜん』だろうが『ちくわぶ』だろうが、どうでもいいことです。船の名前だけでいえば船体に大きく書かれているのが映っているだけで十分に伝わります。さらにPJH06となると何が何だかさっぱり分かりません。

やはりドラマとしては必要ないのです。必要ないのですが、そのタイトルが入ることで、よりドキュメンタリータッチが強まり、リアリティーが増すわけです。

『13階段』はサスペンスドラマですが、死刑を含めた刑罰を応報(復讐)刑として考えることへの問題提起という社会的な問題を扱っています。また『海猿』も不審船や密航者など、実際に起こった事件が題材となっています。

だからこそドキュメンタリータッチで描き、タイトル法を使うことで観客や視聴者に、ちょっとクールに考えてもらいたいという意図があるのです。

出典:『月刊シナリオ教室』(2010年6月号)掲載の「シナリオ錬金術/浅田直亮」より
次回6月25日に更新予定です

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