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群像劇を書くときも主人公を出ずっぱりに

群像劇を書くときも主人公を出ずっぱりに

「群像劇を書きたいけど、描く人物が多いと、誰が主役なのか分からなくなる…」とお悩みの方は、今回、浅田講師がお伝えする“術”を使ってください。この“術”は、群像劇以外でも勿論 使えます!

このコーナーでは、「自分にはシナリオを書く才能がないかも……」と悩んでいるかたへ、面白いシナリオが書けるようになるちょっとした“術”を、シナリオ・センター講師・浅田直亮著『いきなりドラマを面白くする シナリオ錬金術』(言視舎)&『月刊シナリオ教室(連載「シナリオ錬金術」)』よりご紹介いたします。

主人公は出ずっぱりに

こんな経験はありませんか?

たとえば、ちょっと前になりますが2002年ソルトレイク冬季オリンピックの男子スピードスケートのテレビ中継を観ていた時のことです。

私は堀井学選手を応援していました。堀井選手は長野オリンピックの前々年までワールドカップで優勝し、世界記録を樹立するなど世界の頂点にいましたが、スラップスケートの出現により状況が一変、長野オリンピックでは惨敗してしまいました。

テレビのインタビュアーがマイクを向けた時、堀井選手は礼儀正しく帽子とサングラスを取り、スキンヘッドと泣き腫らした目をさらしてインタビューに答えたのです。

その誠実な姿勢に、すっかり大ファンになってしまった私は、ソルトレイク・オリンピックでメダルを取る可能性は低かったかもしれませんが、それでも堀井選手を応戦したい!と、テレビ中継を心待ちにしていたのです。

が、テレビ中継を観てガッカリしてしまいました。国際映像とやらで、堀井選手がほとんど映らなかったのです。スピードスケートは二人一組になってレースをしてタイムで順位を争いますが、堀井選手と同じ組で滑った選手の方がタイムがよく、そちらの選手ばかりが映されていました。

堀井選手も、まったく映っていないわけではなかったのですが、ちょっと映って「がんばれ!」と思ったら、すぐに相手選手になり、またちょっと映っては相手選手になり、という感じだったのです。なんだよ、もっと堀井選手を映してくれよ!と不満タラタラのうちにレースは終わってしまいました。

このように応援したい選手が途切れ途切れにしか映っていないと、レースに入りこむことが出来ず、なんだか醒めてしまいます。観終わった後も、なーんだ、という感じでしょう。

逆にいうと、もし堀井選手がずっと映し出されていたら、応援はヒートアップしていき、ゴールの瞬間は最高潮に達して、観終わった後も感動したことでしょう。

シナリオにも同じようなことが言えます。主人公が途切れ途切れにしか出てこないと観客や視聴者がドラマに入りこむことが難しくなります。主人公から目を離さず、ずっと主人公を追いかけて描いていると、主人公に感情移入しやすくなるのです。なので、つねに主人公を描くようにしてみて下さい。

できれば、どのシーンにも主人公が出ている、主人公が最初から最後まで出づっぱりにしてみて下さい。

イメージは戦闘機のミサイルが、標的物である敵の戦闘機に照準を合わせて発射されると、標的物を追いかけて逃さない感じです。主人公にロックオンして追いかけて描いてみて下さい。

というわけで今回は、ロックオン誘導ミサイルの術!

ラブストーリーでも視点を決める

たとえば映画『ジョゼと虎と魚たち』を観てみましょう。

この映画は妻夫木聡さんが演じた大学生の恒夫と、池脇千鶴さんが演じた足が不自由でまったく歩けないジョゼという女の子のラブストーリーですが、恒夫が最初から最後まで、ほぼ出ずっぱりに描かれています。

恒夫が描かれていないのは、トップの写真だけが映るシーン(ただし、ここは恒夫のナレーションが入っています)、夜の街やオフィス街、ジョゼの家の前といった実景のシーンいくつかと、ジョゼが施設にいた頃の回想シーン、恒夫の元の恋人だった香苗とジョゼが坂道でビンタを張り合うシーン、ジョゼと同じ施設にいた幸治とのシーン、そして、ジョゼが電動車いすで買い物から帰ってきて台所で魚を焼くラストシーンだけです。

なので、恒夫に感情移入して映画の世界に入っていくことができます。

この映画の撮影中、ロケバスの運転手さんがシナリオを読み、「こんな悲しい結末にするなんて、あなたは何てヒドイ人だ!」と脚本家の渡辺あやさんに怒ったというエピソードを聞いたことがあります。それだけロケバスの運転手さんは深く感情移入し描かれている世界へ入りこんでシナリオを読んだということだと思います。

特にラブストーリーの場合、恋人同士の両方を描きたくなってしまいます。もちろん両方を描いてもいいですし、そのように描かれている映画やドラマもたくさんあります。

ただ20枚シナリオやコンクールなどの1時間ものシナリオでは、どちらか一方に視点を決め、その一人の人物の感情を追いかけて描いていくことで、感情の流れが途切れず、より深く感情移入できるシナリオになりやすいと思います。

群像劇とコメディ

映画『スウィングガールズ』も上野樹里さん演じる主人公の友子が、最初から最後まで、ほぼ出ずっぱりになっています。

この映画は、女子高校生がビッグバンドジャズをやるというコメディータッチの青春ドラマで、ちょっと群像劇のような印象があるのですが、主人公が描かれていないシーンは限られています。

トップの校舎の廊下や降りなければならない駅のホーム、音楽室からレコードが転がってくる廊下といった情景描写の短いシーンを別にすると、主人公以外の人物が描かれているのは主人公たちが届けることになった弁当を待っている野球場のシーン、リズムセクションやトロンボーンセクションの練習シーン、竹中直人さん演じる教師の小澤が通う音楽教室のシーンや、そこで平岡祐太さん演じるバンドメンバーに見つかるシーンといったぐらいでしょうか。

特に青春ドラマやコメディーでは群像劇として描きたくなることがあります。もちろん、これも群像劇で描いてはいけないというのではありません。

ただし、群像劇は描こうとする人物が多ければ多いほど、一人の人物を描きこむ分量が少なくなりますし、その分、最初の堀井学選手の例でいうと観たいと思っている人物が映っている時間が短くなるということになります。それだけ観客や視聴者を感情移入させるのが難しくなるということです。

基本的には感情移入すればするほど観客や視聴者は「面白い」と感じてくれますので、群像劇で「面白い」シナリオを書くのは難しいわけです。

ただし、コメディーは、ちょっと例外で、あまり主人公に感情移入し過ぎてしまうと、笑えなくなってしまいます。ほかのジャンルに比べるとコメディーに群像劇の例が多くなるのは、そのせいでしょう。

もし群像劇を書くのであれば、まず登場人物のキャラクターを、どの人物も個性がある魅力的なキャラクターに描いてみて下さい。

たとえば三谷幸喜監督の『有頂天ホテル』など、どの登場人物を主人公にしても一本の映画が描けてるのではないかと思うぐらい、それぞれ個性があり魅力的に描かれていて、なんだか、もったいないような気がしてしまうほどです。

日本の映画ばかりではありません。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も、マイケル・J・フォックス演じる主人公が、最初から最後まで、ほぼ出づっぱりになっています。

高校生の主人公が、ちょっとした手違いでドクという博士が発明したタイムマシンで三十年前にタイムスリップし、高校生だった自分の父親と母親に出会うのですが、母親が自分のことを好きになってしまい、なんとか父親と母親を結びつけようとしつつ、三十年前のドクに協力してもらって元の世界に戻ろうとする話ですが、終盤まで主人公が出ていないシーンはありません。

終盤、母親が車で襲われそうになっているのを父親が助けるシーンと、落雷のエネルギーを利用してタイムマシンを元の世界に戻そうとするドクが準備をしているシーン、落雷の時間が目前なのにトラブルが発生しドクが何とか修復しようとするシーンだけ、主人公が出ていません。

連続ドラマでは、主人公が最初から最後まで出ずっぱりというのは、むしろ珍しいでしょう。それでも主人公の気持ちをていねいに追いかけて描いていることには変わりありません。

特に20枚シナリオや1時間ものコンクールなど比較的短いシナリオを書くときは、できるだけ主人公を最初から最後まで出ずっぱりにして描くことをオススメします。

出典:『月刊シナリオ教室』(2009年4月号)掲載の「シナリオ錬金術/浅田直亮」より
次回は11月27日に更新予定です

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