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セリフなしのシナリオ で力をつける

セリフに頼りすぎていませんか?「たしかに…」というかた、セリフなしのシナリオを書いてみませんか?今回の“人魚姫の「好き」を伝えるの術”で自分のシナリオを大きく前進させましょう!

このコーナーでは、「自分にはシナリオを書く才能がないかも……」と悩んでいるかたへ、面白いシナリオが書けるようになるちょっとした“術”を、シナリオ・センター講師・浅田直亮著『いきなりドラマを面白くする シナリオ錬金術』(言視舎)&『月刊シナリオ教室(連載「シナリオ錬金術」)』よりご紹介いたします。

セリフに頼り過ぎていませんか

今回は、いつもと少し趣向を変えて、ワンポイントお役立ちアドバイスというより、こんなシナリオを書いてみるのも楽しいよ!という話をします。

どんなシナリオかというと、セリフなしのシナリオです。

え? セリフなし? と思われるかもしれませんが、初めてトーキーが現れたのは1927年、それ以前はサイレント(無声映画)が当たり前でした。

厳密に言えばサイレントだからといってセリフがまったくないというわけではありません。サイレントではセリフは字幕タイトル、それも映像に文字を重ねることができなかったので無地に文字だけの画面が映像と映像の間にはさみこまれます。

そんな文字だけの画面がしょっちゅう入っていたら興ざめです。なのでセリフ(字幕画面)を、できるだけ少なくし、映像で描写し観客に伝えようとしました。

新井一著『シナリオの基礎技術』には、このように書かれています。

セリフが字幕タイトルでしか表現できなかったトーキー以前においては、鳴滝組の人々を中心にして、三村伸太郎氏や山中貞雄氏、伊藤大輔氏の先輩たちは、映像によっていかに表現するか苦心し、その苦心が、日本映画をいかに前進させたか。私たち後輩は忘れてはなりません。その後トーキーとなって、音が入りセリフがいえるようになって、映画人たちは、自ら発見した映像表現のすばらしさを捨て、演劇のセリフ劇に追随したことによって、今日の映画の魅力を衰退させたことも銘記しなくてはなりません、と。

もちろん新井先生は、セリフを全否定しているわけではありません。ただ、セリフに頼り過ぎていませんか? と問題提議しているのだと思います。

たとえば20枚シナリオで一本、セリフのないシナリオを書いてみて下さい。どれほどセリフに頼っていたかが、とても分かると思います。

確かに、まったくセリフを書かないとなると楽しいばかりじゃなく大変さもあるでしょう。人間の姿になった代わりに言葉をしゃべれなくなった人魚姫が、王子を好きであることも、王子を遭難から救ったのが自分であることも伝えられなかったように……。

でも、その大変さの分だけ力がつくこと間違いなし!トーキー以前の大先輩たちの苦心が日本映画を前進させたように、その大変さは、あなたのシナリオを大きく前進させてくれるでしょう。ぜひ一度トライしてみて下さい。

というわけで今回は、人魚姫の「好き」を伝えるの術!

音声を消して観てみる

新井先生と同じことが『映画術』という本にも書かれています。この本は、アルフレッド・ヒッチコック監督にフランソワ・トリュフォー監督がインタビューしています。

まずトリュフォーが、サイレント時代の末期には、ほとんど映画の形式の完成点に近づいていたと思うと述べています。さらに、トーキーの発明はこの完成を妨げ、また元の木阿弥になり何もかもやり直さなければならなくなったのではないでしょうか?と言うと、ヒッチコックは、まったく、その通りだ、と答えます。

続けてヒッチコックは、今でも事情は変わらない、いま作られている映画の大部分は「映画」ではなく「しゃべっている人間の写真集」とでも呼びたいぐらいだ、どうしても必要なとき以外はセリフにけっして頼ってはならないというのが映画の鉄則だと思うんだよ、それがトーキーの到来とともに映画がたちまち演劇的な形式に凝り固まってしまい、その結果、映画的なスタイルがなくなってしまった、と語っています。

また、サイレント時代の監督の才能を評価する目安は、いかにして最小限のセリフの字幕タイトルで映画を撮るかという一点にあったとも述べられています。

スティーブン・スピルバーグ監督も『アクターズ・スタジオ・インタビュー』のテレビ番組で、映画の音声を消して映像だけで、いかに表現されているかを観ると勉強になるという話をしていました。ただし、これは監督志望の生徒の「どのように勉強したらいいか?」という質問に対して答えたものですが、監督志望だけでなくシナリオを書く上でも、とても有効な勉強法ではないでしょうか。

チャップリンの『街の灯』

サイレントでなくてもいいのです。セリフがないだけで音(効果音)はあっても構いません。

たとえばチャップリンの映画『街の灯』は、1931年に作られていて、もちろん、すでにトーキーが当たり前でした。しかし、セリフは字幕タイトルで入れられ、あえてサイレントのように作られてます。

が、効果音や音楽は入っています。銃の音や飲み込んでしまった笛の音など、とても効果的に使われています。

浮浪者である主人公が、盲目の女性と出会い恋に落ちます。そして、その女性の目が手術さえ受ければ見えるようになることを知り、何とか手術代を得ようとしますが、ことごとく上手くいかず…というストーリーですが、特にコメディを書きたいと思っている方は、主人公に目的を持たせ、目的に向かおうとする主人公に障害物をぶつけ右往左往させることで笑いを生み出すというコメディの基本形が、よく分かる典型例だと思います。

そこに言葉(セリフ)は必要ないのです。

逆にラストシーン、盲目だった女性は主人公がくれたお金で手術を受け目が見えるようになっていますが、自分の恩人は、お金持ちの紳士だと思っていて、主人公を見ても、ただの浮浪者としか思えません。

しかし、その手に触れた瞬間、この人こそが恩人だったのだと気づきます。その時、たった3つのセリフ(字幕タイトル)のやりとりがあります。英語標記では読みにくいのでカタカナで書きますが、

「ユー?」
「ユー・キャン・シー・ナウ?」
「イエス・アイ・キャン・シー・ナウ」というものです。

きわめてシンプルですが、何と奥深いセリフのやりとりでしょう!セリフに頼らないように頼らないようにするからこそ生まれた宝石のようなセリフではないかと思います。

世界中の人に観てもらえる

古い映画ばかりではありません。たとえばリュック・ベッソン監督の長編デビュー作『最後の戦い』もセリフのない映画でした。こちらは字幕タイトルもありません。

近未来、最終戦争と異常気象のために空気は汚染し、文明は破壊され、わずかに生き残った人々も声帯を傷つけ、言葉を失っているという設定になっています。なので、登場人物は叫び声などは上げるのですが、セリフは喋りません。

『TUVALU』というドイツの若い映画監督ファイト・ヘルマーの長編デビュー作も、ほとんどセリフがありません。名前を呼んだり「NO!」といった、ごく短い一言が、いくつかある程度です。ストーリーは、廃墟のような町にある古びたプールで働く青年が、プールにやってきた少女に恋をし、少女と船で旅立つことを夢見ながら、町の再開発のためプールをつぶそうとする人たちと戦い…というもの。監督は、自分は翻訳しないで(字幕や吹き替えなしで)世界中で見られる映画を作りたい、と語っています。

確かに、セリフがなければ、すぐに、そのまま世界中の人たちに観てもらうことができます。

フランスの『べルヴィル・ランデブー』というアニメ映画もセリフがありません。これは、ちょっと変わっていて歌はあります。三輪車を買い与えた孫が成長し、ついにツール・ド・フランス(世界最高峰の自転車レース)に参加するが、レース中に誘拐され、おばあちゃんと愛犬が孫を救おうとするロードムービーです。

アニメといえば子供向けのアニメ映画にはセリフのないものが、たくさんあります。チェコの『クルテク~もぐらくんと森の仲間たち~』も、その一つ。1957年から製作が開始され、チェコでは国民的な人気キャラクターです。

今のテレビドラマにナレーションが多いことについて、ナレーションを入れないと今の視聴者には伝わらないという話を聞きますが、本当は、きちっと映像で引きつけ映像で伝わるように作れば子供にだって伝わるのだということでしょう。 

出典:浅田直亮 著『いきなりドラマを面白くするシナリオ錬金術』(言視舎)P126/『月刊シナリオ教室』(2009年6月号)より
次回は7月24日に更新予定です

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