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「 うまく書けなくていい から書きたい思いをぶつける」とは

「うまく書けなくてもいいから、“これを書きたい!”という思いをぶつける」とは、具体的にどういう事でしょうか?今回は、浅田講師が考えるこの言葉の意味をご紹介。「題材」や「テーマ」についても再確認できる良い機会になりますよ。
このコーナーでは、「自分にはシナリオを書く才能がないかも……」と悩んでいるかたへ、面白いシナリオが書けるようになるちょっとした“術”を、シナリオ・センター講師・浅田直亮著『いきなりドラマを面白くする シナリオ錬金術』(言視舎)&『月刊シナリオ教室(連載「シナリオ錬金術」)』よりご紹介いたします。

上手くなくていいのか

「上手くなくていい、自分はこれを書きたいんだという思いをぶつけてほしい」

コンクールの選評座談会などで時々見かける言葉です。

では、本当に「上手くなくていい」のでしょうか?本来「上手い」とは、人に面白いと思ってもらえる技術があるということです。ということは「上手くなくていい」とは「面白くなくていい」ということになってしまいます。そんな馬鹿なことはありません。面白いのと面白くないのでは、面白い方がいいに決まっていますよね?

この「上手くなくていい」という言葉の本当の意味は、きれいにまとまってなくていいよ、多少は欠点があってもいいよ、という意味だと思います。

じゃあ、次に「自分はこれを書きたいんだという思い」をぶつけるには、どうしたらいいでしょう?思いを強く抱いてシナリオを書けば、その思いは自然に、にじみ出てくるものでしょうか?思いを指先にこめてパソコンのキーボードを叩けば、思いのこもったシナリオになるでしょうか?

たぶん、それでは思いが伝えることさえできないでしょう。作者自身が思いがこもっていると自己満足し、だから伝わるはずだと勘違いすることはあるかもしれませんが、少なくても、その思いが人に伝わることはないと思います。思いを伝えるにはカタチにして目に見えるようにしてあげる必要があります。

たとえば、孔雀が愛をアピールするのに大きな羽根を広げるように。さらに、より強く思いをぶつけるには、より大きく、より色鮮やかな羽根にしなければなりません。そのためには技術がいります。思いをカタチにする技術、より強く伝える技術が。

そうなのです、思いをぶつけるには「上手くなくていい」のではなく、技術がいるのです。上手くなくては思いはぶつけられないのです。

というわけで今回は、愛をアピール! 孔雀の羽根の術。

テーマと思い入れ

まず「自分がこれを書きたいんだという思い」って具体的には、どういうことでしょう?もちろん、みなさんがシナリオを書く時は自分が書きたいものを書いているわけです。こういう題材を書きたい、こういう話を書きたいと思って。

じゃあ、そのシナリオを読んでくれた人(たとえばコンクールの審査員など)に、どう思ってもらいたいのでしょう?あるいは、みなさんのシナリオが映画やテレビドラマなどになって、その映画やドラマを観た観客や視聴者に、どう感じてもらいたいのでしょう?ここが、自分がこれを書きたいんだという思いになります。

つまり、自分が書きたいというだけにとどまらず、シナリオを読んでくれる人や映画やドラマの観客や視聴者に、どう思ってもらいたいか、どう感じてもらいたいか、ということです。これをテーマと言い換えてもいいかもしれません。

テーマを「自分は何を書きたいか」だと思っていると、題材と勘違いしてしまう人が多いので注意して下さい。たまにシナリオ診断などで「テーマは何ですか?」と質問すると、たとえば「私は引退するプロ野球選手の話を書きたいんです」と答える方がいらっしゃいます。これはテーマではなくて題材です。

引退するプロ野球選手の話を書くことで、読んでくれる人や、映画やドラマになった時に観客や視聴者に何を感じてもらいたいか、まで考えてみて下さい。たとえば、どんなに頑張っても引退する(クビになる)ことは変わらない、それでも最後の最後まで全力を尽くす、たとえ結果は分かっていても最後まで全力を尽くす気持ち良さやカッコよさを感じてもらいたい、みたいなことです。

この自分が書きたい思いなりテーマが伝われば、たとえば片思いで悩んでいる女子高生が観て、たとえフラれても自分の気持ちを伝えた方が気持ちいいしカッコいいな、と思ってくれるかもしれません。

明日も満員電車に揺られて会社行くの嫌だなあ、と思って観ていた中年サラリーマンが、たとえ出世しなくても、明日一日、自分なりに力を尽くして働いてみよう、そうすれば美味いビールが飲めるかもしれないと思ってくれるかもしれません。

無言電話をかけ続けるストーカー、どんなに無言電話をかけ続けても、あの人は振り向いてくれるわけない、いや、それどころか嫌われるばっかりだと思っていたのが、その映画やドラマを観て、たとえ振り向かれることがなくても頑張って無言電話をかけ続けようと思ってしまったら逆効果なんですが………。

注意してもらいたいのは、どうしても、この題材を書きたい、こういう話を書きたいという思い入れが強い時です。自分が書きたいという思いが強すぎると、シナリオを読んでくれる人や観客や視聴者に、どう感じてもらいたいかまで考えないで、結果として、作者の思いばかりが押しつけがましく、そのくせ読んだ人や観客や視聴者の気持ちが動かされないシナリオになりがちです。

テーマは変化で描く

では、どうすれば自分がこれを書きたいという思いなりテーマなりをぶつけることができるでしょう?セリフで言えばいい?

確かに、それが一番手っ取り早くて分かりやすいかもしれませんが、テーマなり自分の思いなりをセリフで直接語ってしまうと、どうしても説教臭くなって、かえって反発されがちです。最初こうだったのが最後こうなるという変化で、観客や視聴者が自然に感じ取れるよう考えてみて下さい。

映画『ローマの休日』を観てみましょう。王女と新聞記者の出会いから別れまでを描いたシンプルなラブストーリーです。ラブストーリーだからといって恋愛がテーマというわけではありません。王女と新聞記者の恋は、あくまでも題材です。

主人公のアン王女は、最初は周りの人たちの指示通りに話し行動しています。そのため、とても窮屈で不自由に感じています。そのため自由を求めて、こっそり宿泊先を抜け出します。が、最後は王女として宿泊先に自ら戻ってきます。そして、自分の言葉で話し行動し始めます。

この映画は、アン王女と新聞記者の恋だけをみれば悲しい結末です。決してハッピーエンドではありません。しかし、映画を観終わった後、不思議と明るい気持ちになるのは、この変化によってテーマを感じているからだと思います。

『フル・モンティ』という映画は、製鉄工場で働いていた男たちがストリップをするというコメディですが、最初は口ばっかりでカッコばかりつけていた主人公が、最後は意地もプライドも脱ぎ捨てて身も心もフル・モンティ(=フルチン)になるという変化が描かれています。

また、『レオン』は、孤独な殺し屋が女の子の復讐のため麻薬の裏取引のボスと闘うアクション映画ですが、最初は自分の身を守るために一時も気を許さず、人と交わることのなかった主人公が、最後は女の子の復讐を果たすために自爆するという変化が描かれています。最初は鉢植えで育てられていた主人公の観葉植物が、最後は女の子の手によって大地に植えられるという変化も印象的です。

特にコメディやアクションは、ともすると笑いやアクションそのものを描くだけになりがちですが、きちんと変化を描いている作品もあるので参考にしてみて下さい。

ただ、自分のシナリオを読んでくれる人や、映画やドラマになった時、観客や視聴者に、どう思ってもらいたいか、どう感じてもらいたいかを考えることは大切ですが、なかなか難しく時間もかかる大変な作業になります。

なので、コンクールのシナリオを書くときなどは、最初こうだったのが最後こうなるという変化だけを、しっかり考えるようにしてみて下さい。それだけで十分に自分はこれを書きたいんだという思いなりテーマなり、ぶつけることができるはずです。

また、20枚シナリオでは、そこまで考える必要はないと思います。20枚シナリオは、あくまで部分ですし、そこまで考えていたら1本書くのに時間がかかり過ぎてしまうでしょう。できれば20枚シナリオは1週間から2週間ぐらいで、どんどん書いていってほしいので。

コンクールに応募するシナリオなど一つの作品として書くときに、ぜひ、最初こうだったのが最後こうなるという変化を描いて、自分はこれを書きたいんだという思いなりテーマなりを伝えてみて下さい。

出典:『月刊シナリオ教室』(2009年10月号)掲載の「シナリオ錬金術/浅田直亮」より
次回は5月22日に更新予定です

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