menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

災害も音楽も共通点は想像力

JASRAC音楽文化賞記念講演会

台風19号

シナリオ・センター代表の小林です。台風19号は、大きな爪痕を残し、広範囲に多大な被害をもたらしました。
21河川が決壊し、浸水、土砂崩れなど命を奪われる被害が続出していますが、停電、断水、被害状況もまだまだつかめておらず、福島では、除染廃棄物が川へ流出し、その数もわからないとか、不安な日々は続いています。
皆様ご無事でお過ごしでしょうか。
被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
幸いに無事であったシナリオ・センターですが、本当にこれもたまたまとのこと、いつなんどきどこでどうなるかは誰にもわかりません。
他人事と思わずに、おかげさまで難を逃れた私たちは、被害にあわれた方々の支援をしなければと思っています。
台風15号の義援金に引き続き、19号の義援金をよろしく願いいたします。
また、被災された通信生の方は、お描きになれる状況までお休みいただき、再開できるようになりましたらご連絡ください。
いつからでも再開いたしますので、ご安心ください。それぞれのご事情に合わせて対応させていただきます。

社会に翻弄された音楽を辿って

「JASRAC音楽文化賞記念講演会」へ行ってまいりました。
坂口理子さんが映画「この道」の脚本家として登壇されたからです。
演題は「社会に翻弄された音楽を辿って~明治から戦中、そして現代~」
日本の音楽コンテンツの多くは西洋音楽に求められますが、具体的には明治政府が国民や軍隊の規律化、統合を目的に導入した「軍楽」に始まるとされています。
昭和初期の音楽家の活動を俯瞰しながら、社会に翻弄される音楽の変遷を、歴史的事実から、音楽文化史研究家の戸ノ下達也さんがわかりやすく説明してくださいました。
そして、戦争に翻弄された音楽について、作曲家の菅野由弘さん、「あの日のオルガン」の監督脚本の平松恵美子さん、そして、映画「この道」の脚本家として坂口理子さんが登壇され、色々な角度からお話ししてくださいました。
戦時下で初の保育園疎開に挑んだ保母たちの実話を描いた「あの日のオルガン」では、なにもない戦時下で音楽がひっそりと文化的生活を守り続けた、子どもも大人も心の隙間を埋めるものとして音楽があったと語っています。
坂口さんの映画「この道」は、北原白秋と山田耕筰の友情を描きつつ、戦時下での二人の生きざまを描かれています。
北原白秋は、軍歌を作ることを拒否するのですが、妻に生活はどうなるのと言われ、違う形で力を貸すことになります。山田耕筰は、拒否することなく戦意高揚の曲を作ります。
山田耕筰は、そのために戦後は戦犯とされてしまいますが、坂口さんはふたりの違いは、表面的なだけで、裏は同じような気持ちで、このふたりの二面性こそがふたりをつなぐ友情だったのではないかとお話しされていました。
山田耕筰は、音楽を未来の残すためにあえて拒否をせず、北原白秋は拒否することで反戦を訴え、どちらも強い決意がなくてはできないことだと思います。
戸ノ下さんは、2019年のこの時期に「あの日のオルガン」「この道」が映画化されたことは、どこへ向かっていくかわからない今の時代だからこそ、声高に叫ぶのではないが必要なメッセージだと話されていました。
戦争に負けたから戦犯呼ばわりされてしまう山田耕筰もそうですが、画家藤田嗣二もそうでした。彼はフランスに逃げるしかありませんでした。
日本画家の川端龍子は従軍画家をしていましたが、描かれた「香炉峰」は透明な戦闘機で、戦意高揚にも見え、反戦にもみえ、その龍子の本心は計り知れませんが、そういう表現の方法もあります。

多くの表現者の苦労も、もし日本が負けていなかったら?そう考えると違った見方が出てくるかと思います。
発想は立場を変えてみる、見る方向を変えてみるとまた違ってきます。
私たちは、映像や文章で表現していますが、音楽や絵画、様々な手法で色々な表現はできます。
いつの世でも、自由に楽しく、自分らしく表現できること、切に願っています。

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ