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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

残り火

城戸賞授賞式

城戸賞発表

シナリオ・センター代表の小林です。今年も余すところ1ヶ月となり、今年のコンクールの発表もわずかとなりました。
今日は、城戸賞の発表がありました。
最終審査10名中8名の方がシナリオ・センターで学ばれた方々で、その中で佳作1編の見の受賞となり、伊藤洋子さんが選ばれました。
おめでとうございます。やりましたね!!
最終審査に残られた方々ももちろん実力のある方々ばかりです。
賞は逃しましたが、城戸賞を最終に残った力は大変なものです。この実力をステップボードにもうひと押し頑張りましょう。
来週は、伊参スタジオ映画祭、函館港イルミナシオン映画大賞などの発表をお伝えできたらと思っています。お楽しみに。

許すこと

劇団青年座の「残り火」というお芝居を観てきました。
例年、年のラストに掛かるお芝居は、人としての生き方を問う作品が多いのですが、今回のお芝居は、交通事故の被害者と加害者のお話しです。
作家の瀬戸山美咲さんは実際の事件や事故をベースにしたジャーナリスティックな作品を描くことで有名な方です。主宰のミナモザで、2013年に上演した「彼らの敵」はパキスタンで誘拐された日本人学生に対する、帰国後の社会のバッシングや偏向報道を描いた作品で広く注目されました。
今回の被害者加害者問題もそうですが、何を正義とし、正解とするのかは難しい問題です。すべての物事は、それぞれの人々のそれぞれの価値観、正義・正解があるのですから。
瀬戸山さんは「ものを書くことはその個別の人生にずかずかと踏み込んでいくことであり、それが必ずしも当事者のためになるかはわからない。
ただ、事件の外側にいる人にとっては、演劇を通してその個別性を想像することは少し意味があるのかもしれない。
事件の表層を見て大騒ぎするのではなく、被害者家族の人生も加害者家族の人生も今後も続いていくと想像する。自分自身や近くにいる人が事件の当事者になる可能性があることも想像する。
その想像力が何かあったときに生きる力になる。そんなことを考えながら作品を書いた。」とプログラムに書いていらっしゃいました。

交通事故で亡くなった8歳の女の子。昨今問題になっている煽り運転の犠牲になったのだ。
その事故から12年の月日が流れ、被害者側の家族は両親は離婚し、父親は娘と過ごした家で喫茶店を、母親は再婚、兄はフリーのライターになっている。そして、加害者は5年間服役し、その間友人が家族の面倒を見てくれ、出所後は妻の苗字に変えて新たな居酒屋をオープン、長男は弁護士、長女はハワイ留学計画中という一見豊かな生活を送っている。2店目をオープンしようとした矢先、被害者の兄が表れ、その均衡が壊されていく。

ここでは被害者の家族はもちろん、加害者の家族も人殺しの子と言われ、石もて追われる身になる・・・。 被害者家族も加害者家族も法律では割り切れない「心の痛み」が残り続ける。被害者は、失った人への消失感と「許せない」苦しみから解放されず、加害者は「許されない」苦しみから逃れられない・・・。
謝ること、償うこと、許すことの本質を考えさせられるお芝居です。

どちらの立場にもなりうること、私たちはどこまで想像性を持って己の心に立ち向かえるのでしょうか。
昨今はSNSなどで、簡単に誹謗中傷ができる時代です。被害者加害者ともにマスコミ、インターネットで晒され事件事故そのもの以上のより深く傷つけられ、生活や人間関係が壊されてしまいます。
そんなことを何も知らない何も考えない第三者が簡単に糸の生活を崩壊することできてしまう世の中、人としてどうすべきか、どう対していくか、向き合わなければならないとこのお芝居で感じました。

12月2日まで、ザ・スズナリ(小田急線下北沢)。 シナリオ・センター受講生は割引きでご覧いただけますので、センター事務局へご連絡ください。

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