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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

赤い靴

赤い靴(ポプラ社刊)

明日は台風で・・・

シナリオ・センター代表の小林です。またまた台風が来るようで、今回は関東直撃情報もあり、明朝から通勤の足がというニュースに、明日は全面休講にして、台風に備えることにしました。
明日8日は、ゼミナール、講座とも休講にし、5週目の29日に振替をいたします。
よろしく御承知おきくださいませ。
ここのところ迷走ばかりの台風で、果たしてどうなるかはまったく見えませんが、ご無理しておいでいただいて帰れなくなってもと思います。
最近は、世界中で自然の猛威にさらされ続け、文明の驕りをしみじみ感じさせられています。
人間は、自然から見れば本当にちっぽけなものです。
驕ることなく地に足の着いた生活をするにはどうしたらよいのかを見直したいと思います。

8月6日、昨日は広島の原爆記念日でした。
73年経ちどんどん風化していく中で、先週NHKBSで「なぜ日本は焼き尽くされたのか。米空軍幹部が語った真相」をみました。素晴らしいドキュメンタリーでした。
アメリカがしっかりと戦争記録を保存して開示することに日本との違いをまざまざと感じました。 原爆を何故落としたか、何故焼夷弾で日本を焼き尽くしたか、その真実は本当に恐ろしいもので、アメリカ人の誰もが日本人が同じ人間だということを忘れていたように思えました。
それでもそういうアメリカだったことをきちんと見せてくれることは素晴らしいことです。
日本の政府は、見せません。隠すことしかしません。
アメリカの言うとおりになるのなら、せめてここを見習ってほしいものです。 
ちゃんと、このドキュメンタリーのように何故そうなったか、誰が何を言ったか、責任を持って、悪いこともすべて検証すべきです。

 

作家性

出身ライターの大山淳子さんの新刊が出ました。
「赤い靴」(ポプラ社刊)
ドーンと厚い400ページ超の単行本。 表紙は、おどろおどろしい赤く血塗られたような花束で描かれ、帯には、「殺戮、失踪、慟哭、そして・・・。息もつかせぬ怒涛の展開。一気読み必至の傑作長編!!」
え~、本当に大山さんの本なの???
お送りいただいた梱包を開けたとき、ちょっと心臓バクバクってかんじでした。
だって、いつもほんわかとした気持ちをやさしくしてくれるような表紙がほとんどの大山さんの作品。もちろん、作品も心温まる、素敵な人間関係を描いた作品が多く、ミステリーですらほんわかしていたし・・・。
いやあ、一気読みだって・・・え~、私の嫌いなホラーっぽいやつなの?と思いながら、読み出しました。なんと400ページ超の単行本を土曜日の一日で一気に読み切ってしまいました。
帯に書かれたように止まらないのです。息もつく間もなく次から次へとページをめくりたくなってしまうのです。
驚愕のミステリーなので、ネタばれしても面白くないので内容はお話ししませんが、大山さんの筆力を堪能させていただきました。
まったく違う作者かと思われるほど今までの大山さんのイメージを一変した作品でありながら、大山さんらしさに魅了されながら読んでしまう作品でした。
主人公の魅力を示す一文のなかに、主人公に日本文学に精通していると自負する女友達が、主人公へ優位に立ちたいと堀辰夫の「風立ちぬ いざ生きめやも」の一節が特に心に残るという話をするくだりがあります。
主人公は、小説は読んでないという。女友達はこれこそと「いざ生きめやも」の表現の美しさへの知識をひけらかします。
すると主人公は、引用されたヴァレリーの詩をフランス語でいい、「先ほどの一節が引用だとしたら堀辰夫は訳を間違えた。風が吹いた、さあ、生きよう。あるいは、生きねば。うん、そうよね、生きねばの方が響きがいいわね。風が吹いた、生きねば。ニュアンスとしてはそれが正しい訳よ。風が吹いた、死ぬのだなあ、それは全くの誤訳」
主人公のキャラクターがさりげなく、日本文学が大好きな大山さんらしい表現で見せてくれています。
いつもと違う、ちょっとおどろどろしい表紙に見合うお話しなのですが、どこまでも大山さんらしい人間愛を感じる素晴らしい小説となっています。
構成力も優れていて、これが一気読みさせた力なのだと感心しました。
新しい境地を開かれたなあと感動しながら読ませていただきました。お勧めです。すごく重厚なドラマになりそうです。

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