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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

「茶色の朝」を迎えて

「茶色の朝」(フランクパヴロフ・藤本一義訳 大月書店刊)

「茶色の朝」に目覚めて

シナリオ・センター代表の小林です。血圧が上がりました。
やるせないというか悲しいというか、腹立たしさを通り越して、ばかばかしさと空しさばかり募る「茶色の朝」を迎えてしまったからです。
「共謀罪」ルールを無視して本会議強行採決で成立。
「共謀罪」については、創作に携わる者はみな危惧を持ち、ペンクラブ始め、昨日は、シナリオ作家協会など10団体が、緊急記者会見を行い「NO!」を突き付けました。
シナリオ作家協会の加藤正人理事長は「優れた表現はときに公序良俗、反権力にも踏み込む。
しかし、共謀罪が成立するとそういうテーマを忌避する傾向に拍車がかかり、シナリオ作家が自由な表現を生み出すことが困難になる」と懸念を表明されました。

 

私が一番危惧するところは、「共謀罪」そのものもそうですが、法律を創るときの基本のルールさえ無視してしまえる現状です。
本来は、法律を作るときは、専門的な色々な委員会で議論して採決されて、初めて衆議院・参議院の本会議に回され、そこでの採決で立法されます。
特に重要な採決の前には、地方・中央公聴会も開催されます。
あの「安保法制」の時ですら、一応はこの手順は踏んだのですが、昨日はこのすべての手順をぶっ飛ばして、本会議で強行採択をしました。
必要性も緊急性もないにもかかわらず、先人たちが積み重ねてきたルールを平気で無視して、事実上無制限に国民を監視・捜査できる権限を持ったのです。
もはや、1強というより独裁といえる暴挙で、立法府はなくなったのも同然、三権分立の意義もへったくれもありません。

 

「ルールを無視してしまえる現状」と書きましたが、悲しいことに、この現状は、私たち国民が創りあげたものだと思うのです。
国民のひとりひとりがちゃんと思考しないから、声をあげないから、お上は、国民のことなど「無視してしまえる」のです。
前述した「茶色の朝」というのは、フランスの寓話で、哲学者の高橋哲哉さん(東京大学大学院教授)が紹介されている、フランスで100万部以上のベストセラーとなった本です。

「茶色の朝」は、ある日茶色のペット以外認めない法律ができ、茶色以外のペットは殺されてしまうのですが、主人公は、仕方がない、自分には関係ないとあまり深く考えずにいるうちに、全てが茶色でなくてはいけなくなってしまう。そして、関係ないと思っていた主人公もついに・・・というお話です。
高橋哲哉さんは、この寓話を例に、
「自分の頭で考え、声を出して、動いてみること、思考停止を止めることが大事だ」とおっしゃっています。
今の日本は、「茶色の朝」になりつつあります。
すべてが茶色になるのはアッという間です。
「茶色の朝」にならないために、「仕方がない」と思ってはいけない。
ルールを無視されても、仕方がないと思っている国民になってはいけないのです。
「茶色の朝」になる前に、私たちは自分の想い、考えを持って、きちっと声を上げるべきなのです。

日本中の人にシナリオを描いてもらいたい

創設者の新井一が志してきたものは、シナリオという技術を通して、すべての日本人が自分で考え、想い、伝える力を持つことです。
そのために、シナリオ・センターが生まれたのです。

シナリオを描くとき、どちらかに偏っては、人の心に伝えることはできません。
自分の想い、考えを伝えるためには、対立する相手の想いや考えもわからなくては魅力あるシナリオは描けません。
シナリオ・センターは、このシナリオを描く技術、シナリオライターの発想を使って、様々な形で、幼稚園児からシルバーエイジまで一人でも多くの方々にシナリオを描いてもらうことで、自分の考え・想いをしっかり持っていただくことを目指してきました。

考えは、賛成でも反対でも、右でも左でも、黒でも白でもグレーでもよいのです。
人は誰一人同じ人はいないのですから。
どんな考え方も、100%正しいことはありえないのですから、様々な考え方、想い、キャラクターをきちんと知り、表現していくことが大事なのです。
だからこそ、今日のようにこんな形で、人間の尊厳にかかわることを、わずかな一方的な力に押し切られて、決まってしまうことを許してはいけないのです。
私たちは、すべての人間は、自分で想い、考え、伝える力を持ち、声を常に上げるべきだと思います。

この日記では、シナリオ・センター代表として書いているので、できうる限り俯瞰で捉えて個人的な感覚で述べることは極力避けてきたのですが、今日は表現者のひとりとしてとして、日本国民のひとりとして、声を上げさせていただきました。

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