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脚本の勉強法 :『14才の母』に学ぶ脚本で葛藤を書く方法

「そこそこ面白い」から「飛躍的に面白い」シナリオにするシナリオの書き方を、シナリオ・センター講師浅田直亮著『シナリオパラダイス 人気ドラマが教えてくれるシナリオの書き方』(言視舎)からご紹介。
今回は、テレビドラマ『14才の母』から学ぶ、脚本で葛藤を書く方法。「視聴者を感情移入させるには、主人公にどんなことをさせて、どう葛藤させればいいんだろう…」というお悩みも解決です!

主人公に悪いことをさせると葛藤が生まれやすい

こんにちは。エンゼル浅田です。
あなたのシナリオをパラダイスに導きます。

主人公に悪いことさせていますか?
何か、ついつい、いいことや正しいことばかりさせてしまっていませんか?

気をつけてください、一番つまらなくなりがちなのが、いい人がいいことをする話です。いい話(ストーリー)で終わってしまって、ドラマ(葛藤)が生まれにくいのです。

むしろ、主人公が悪いことややってはいけないことをする方が、ドラマを生み出しやすくなります。主人公を止めようとする人物を作って対立させることも、主人公自身が、やってはいけないと思う、でも、やろうとする、けど、やめようとする、が……と葛藤させることも自然にできちゃいます。

ただ、この悪いことややってはいけないことをやらせるのが苦手という方、多いんですよねえ。シナリオ・センターのみなさんは特に。

もちろん、主人公がいいことや正しいことをやったっていいんです。ドラマさえ作れれば。

でも、いいことや正しいことをやろうとしてるのに、それを止めようとする人って難しくないですか?

作れなくはないけれど相当な悪役になりそうです。この悪役を描くのも、みなさんの苦手なものの一つですよね。

また、いいことや正しいことをしようとしている主人公を葛藤させるのも、ものすごく悩みそうです。

だから手っ取り早く悪いことをやらせてみてくださいということなのですが、そんなこと言ったって、苦手なんだからしょうがないじゃない!とキレないでください。

確かに、苦手を克服しようとすることは悪いことではありませんが、それでシナリオを書くのが楽しくなくなったら元も子もありません。

そこでオススメなのが、決して悪いことではないけれど、その世界では許されていないことを主人公にやらせてみてください。

分かりやすくいうと『ロミオとジュリエット』です。二人が愛し合うことは決して悪いことではありません。むしろ、いいことかもしれません。

でも、キャピュレット家とモンタギュー家の間では許されないことになります。その世界でのタブーに挑むと考えてもいいかもしれません。

これなら苦手意識なく書けそうでしょ?

しかも、主人公がやろうとすることを止めようとする人物を作って対立させたり、主人公自身に、やろうと思う、が、やめておこうと思う、けど、やろうとする、でも、やめようとする、しかし……と葛藤させることもできてドラマも作りやすいので、面白いシナリオになること間違いないでしょう。

主人公がタブーに挑んた時も葛藤が生まれる

というわけで今回は『14才の母』を取り上げます。

衝撃的なドラマでした。
志田未来さん演じる一ノ瀬未希は中学2年生で妊娠します。当然、両親は中絶させようとし、最初は未希も同意しますが、やっぱり産みたいと言い出し、ついに出産することになるという、社会派ホームドラマです。

もちろん、14才で子どもを産んだからといって犯罪になるわけではありません。決して悪いことではないわけです。悪いことではありませんが、実際に14才という中学生の世界では許されることではないでしょう。

ドラマの中でも「14才で赤ちゃんを産んだら罪になりますか?」と問われた産婦人科の女医が「いいえ。でも、子どもを産んだのに育てられなかったら、それは罪になるんじゃないかしら。あなたと彼氏に育てられる?」と問い返します。

さらに「あなたの年令で子どもを産むことは、命の危険を伴うからね」と言い、「勉強や世間の目なんてどうにでもなるけど、あなた自身が死んじゃったら取り返しのつかないことになるでしょ?」と続けます。

それでも未希は、そのタブーに挑もうとします。すると、ドラマが生まれます。

一番は家族のドラマです。

未希の妊娠を知った両親は、中絶するため病院に連れて行こうとしますが、未希は産みたい気持ちもあり「一日だけ待って」と頼みます。父親は「明日は必ず病院に行くんだぞ」と。

しかし、妊娠することになった相手の男子中学生から「(産むのは)やっぱり無理だと思う」と言われ、未希は中絶することを決意します。

病院で手術を待ちながら母親は、どんなに未希のことを大切に思っているかを話します。

すると未希は「たぶん、お母さんが私のことを大事に思ってくれればくれるほど、私、忘れられないと思う。だって、お母さんにとっての私は、私にとっての……私にとっての……」と言って「私、やっぱりできない。手術なんてできない」と病院から飛び出していってしまうのです。

それでも母親は中絶するよう説得します。「未希の歳で子どもを産むなんて無責任よ! 生まれてくる赤ちゃんのことを考えなさい。相手の男の人に父親になる気はない、母親のあなたは、まだ中学生で働くことすら出来ない、そんな状態で生まれた子どもが無事に健康に育つと思う?」と。

「私、会いたいの。お母さんが私に会うために生まれてきたって思ってくれたように、私も……だから産みたいの」と言われ、母親はついに未希の出産を許す決意をします。父親は、まだ納得し切れないのですが…。

母親も父親も、産みたいと思っている未希を止めようとし対立します。そして、未希自身にも、産みたいと思う、けど、産むのはやめようと思う、でも、産もうとする、が……と葛藤します。

とはいえ、母親も父親も悪役ではありません。未希のことを心配し愛するがゆえに、止めようとするのです。

葛藤をきちんと書けば悪役にも感情移入

出産を決意した後は、家族が周囲との対立から葛藤していきます。

近所の冷たい視線にさらされたり、弟が学校で仲間はずれにされ早退したりします。

最も対立するのは、妊娠した相手の男子中学生の母親です。認知を求めない誓約書に署名捺印してくれと迫ってきます。

父親と母親は、未希の精神的なストレスになるからと誓約書を見せずに拒否します。が、結局は未希自身に判断を任せます。未希は誓約書に署名捺印することを選びます。

そのストレスが原因かどうか、子宮が収縮し未希は路上で倒れてしまいます。

また、予定日より1ヶ月も早く陣痛が始まり、胎盤早期剥離を起こして大学病院へ搬送されることになった時、未希はうわ言で、妊娠した相手の男子中学生の名前を呼びます。

それを聞いた父親は、未希と男子中学生に二度と会うなと厳しく言っていたのですが、母親の事業が倒産し、一緒に雲隠れしている男子中学生を探します。未希の妊娠を記事にした週刊誌の記者にまで、居場所を知っていたら教えてくれと頭を下げます。そして、男子中学生に、未希に会いに来てくれと頼むのです。

未希と相手の男子中学生のドラマもあります。

まずは妊娠したことを告げようとして、告げられなくて……という葛藤や、出産の決意を固めて男子中学生には二度と会わないと決意し、別れようと思うけど別れたくない、でも……と葛藤したり、会いたいけど会えない葛藤などなど、未希自身のドラマが生まれます。

また男子中学生にも、妊娠を告げられ、産みたいと打ち明けられた葛藤や、未希のことを心配しながらも、母親と夜逃げしなければならなくなったり、大学病院に搬送された未希に会いに行こうと思うけど、会えないと葛藤したり、いざ会いに行くと逃げ出したりといったドラマが生まれます。

ほかにも、未希が通う学校のドラマ、担任教師やクラスメイトの葛藤も描かれます。

このドラマの悪役は、強いて上げれば、週刊誌の記者と男子中学生の母親でしょう。

特に男子中学生の母親は、シングルマザーとして懸命に働き、事業を大きくしつつ(たぶんシングルマザーだと企業に雇われて働くのが難しく、個人で起業したのではないかと背景も想像させます)、一人息子を必死で守り育ててきた感情が強く描かれています。室井滋さんの演技力の高さもあって、悪役のはずなのに深く感情移入し、感動させられるシーンもあったほど。

悪役を描くのが苦手という方、ぜひ参考にしてみてください。

これで、あなたもパラダイス!

出典:浅田直亮 著『シナリオパラダイス 人気ドラマが教えてくれるシナリオの書き方』(言視舎)P94より

シナリオ・センターの書籍についてはこちらからご覧ください。

ドラマ『14才の母』データ

2006年10月~12月
日本テレビ水曜22時枠
脚本:井上由美子
演出:佐藤東弥・佐久間紀佳
プロデューサー:村瀬健・浅井千瑞(MMJ)
出演:志田未来・田中美佐子・生瀬勝久・三浦春馬 他
平均視聴率:18.7%
(最高視聴率 最終話/関東地区22.4% 関西地区24.3%)

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