しゃれおつなお店や人々が行きかう街、表参道。そこで働くシナリオ・センタースタッフの見たもの触れたものをご紹介します。
ゼミ生時代は「俗に言う、独りよがりっていう、はまりがちなパターンですよね」という新田講師。みなさんも、ゼミや講座の課題で、独りよがりになっていませんか?
久々の講師インタビューは、2016年10月から月曜日の夜の作家集団を担当している新田講師に白羽の矢を立てました。「長編シナリオ講座」や「S1シナリオグランプリ」の講師としてご存知の方も多いかと思います。
そんなフレッシュな?新田講師のシナリオを学び始めたきっかけから、シナリオから遠ざかったきっかけなど、ざっくばらんにお話し伺いました。自ら、「ダメダメな生徒だった」というのはなぜか?気にしながら読むのも面白いかもしれませんよ。前篇です。
新井(以下、A) 新設クラスもできました。
知らない人も多いだろうし、今回は色々お話が聞いてもっと入ってもらえればと。
新田(以下、N) まあまあ、ほどほどにね。
A ほどほど(笑)。
講師インタビューでは、シナリオを始めたキッカケを聞いているんですが…。
新田さんの場合はどうだったんですか?
N まず、シナリオを書こうなんて思ったことがなかったです。
大学は英文科で、英語の勉強でシナリオを読んでいたんですけどね。
A 英語の勉強でシナリオ?
N うん。もともと英語の勉強は「映画が好きだ」ってところから始めたんですが。
字幕なしで洋画を見ていると分かんないわけですよ、何を言っているのか。
だからシナリオを参考にしながら映画を見ることで英語を勉強していたんです。
A じゃあ英語の勉強を通じてシナリオに触れていた、と。
その時には書こうとは思わなかったんですか?
N そうですね。
大学を卒業して就職してからも、英語の勉強を続けていたから
シナリオには触れてはいたんだけど。会社では海外事業部にいましたから。
A 海外事業部?確かに、シナリオを書くってとこには、つながらない感じがしますね。
勉強を続けていたのは、英語が分からなくて外国の人相手に商談ができなかったとか?
N いや、ビジネスの話は普通にできるんですけど。
ネイティブ同志で話はじめたら何をいっているのか、全然分からないんですよ。
サッパリで。
A へぇ、そんなに違うものなんですね。
N 彼らのやりとりに耳を澄ませてみても、わかるのは「yes」「no」くらい(笑)。
それまで習ってきた英語と同じ英語とは思えない。
でも「ホンモノはこっちだな」って思ってなんとかしたいと。
A 確かに分からないと、そっちの方が深い話をしている感じがしますよね。
N うん。ネイティブ同士の会話についていけるようになるには映画しか思いつかなかったけど・・・
シナリオがあれば分かるというものではなくて、あちこちにわからないところだらけ。
そういう箇所を友人の外国人に聞いたりしたんだけど、
質問事項が多すぎてそのうち避けられるようになりました。
A どれだけ質問したんですか(笑)。
N (笑)。質問の数が多いと相手に迷惑なので、質問の数を減らそうと、
それでシナリオを真剣に読み始めたんです。
するとシナリオの中の仕掛けに気が付き始めて「シナリオってよく出来ているな」って。
A そこで、シナリオそのものを意識するようになったと。
N 英語の勉強じゃなくね。
その仕事は辞めたんだけど、そのつながりで映画シナリオの翻訳もするようになって。
出版社の人から「シナリオを書いたら」と言われて、軽い気持ちで書いてみたんです。
A そこで初めてシナリオを書いたんですか。それは日本語で?
N 日本語ですね。シナリオのこと何にも知らなかったので、
本屋で「シナリオの基礎技術」を立ち読みして。それをまた棚にもどして。
A もどすんかい(笑)。
N すみません(笑)。その後立ち読みを何度繰り返しましたけど、最終的には買いましたよ。(笑)。
雑誌でシナリオを公募していることを知ったのもその時でした。
A シナリオを募集していることって意外とみんな知らない、それは今もそうですよね。
N 「募集しているんだ」って思いますよね。
シナリオというのはどこかのエライ先生が書くものだと思っていたのでびっくりしました。
その時、募集していたテーマが青春。これはダメだって本を閉じて店の棚へ戻して。
A それも、もどすんかい(笑)。
でも、どうして「青春」だとダメなんですか?
N 当時は30いくつで、もう青春って感じではないなと。
でも無理やりページ数を合わせて、とりあえず応募したらいきなり受賞したんです。
A 立ち読みからの受賞(笑)。…スゴいですね。
N たまたまです。実力でもなんでもない。
シナリオのことを何も分からなかったので受賞した後に、
基礎から勉強するためにシナリオ・センターに行くことにしました。
その時点で、新井先生の本も二冊は読んでいましたけど。
A シナリオの「基礎技術」と「技術」ですね。
受講していたのはシナリオ作家養成講座ですか?
N そうですね。担当は後藤先生でした。
受講してみると本と同じことを言っているじゃないですか。
A そりゃそうですよ(笑)。それを元にした講座なんだから、違ったら逆にビックリ。
でも、経験者だと、課題の枚数も最初は少ないし、物足りなく感じたんじゃないですか?
経験者だと、最初の方でフェイドアウトしていく人もいるんですよ。
N いや、短いものも短いなりに書けないですよ。
それにシナリオの実力があったわけではなくて、運で受賞しただけだったしね。
A じゃあ「なんとなくシナリオって知っているけど、講座は講座でなんかプラスになることあんだろ?」
みたいな感じで出席していたとか?
N そんな偉そうなこと考えていなかったよ(笑)。
基礎がないからちゃんと学ぼうと思っていました。
A そうか、案外えらいですね(笑)。
どうしても経験があると、勝手に基礎ができている気になるというか…
作家養成はまさに基礎ですけど、その先の研修科ってどうでした?
新田さんが生徒ってあんまり想像できないんですが。
N 一言でいうと、「ダメな生徒」でしたね。
A はははは(笑)。ダメな?
N 当時は自分の書きたいを最優先にしていましたから。
ほかの生徒さんのコメントも聞いていなかったし、発表も早く終わってくれないかなぁって。
A ダメダメな感じですね(笑)。
他の人のコメントで印象的なのはありました?…その調子だと覚えていないかもしれませんが。
N いや、覚えていますよ。
「新田くんって女が全然分かっていないよね」って何度か言われましたね。
A はははは(笑)。
N 「え、そうなの?」って。
でも、女の人に限らず、こども、お年寄り、あの頃の自分はなんにも分かっていませんでしたね。
A みんなの感想を聞いて、取り入れたりはしなかったんですか?
N そうでしたね。デタラメです。
ただ自分が書きたいっていう一心だったので。
世の中に対して、腹をたてたり、モヤモヤしていること、
それを順番に課題に取り入れていったっていう。
課題が求めていることって、考えもしませんでしたから。
A 無理矢理つなげていたんですね(笑)。
N うん。良くそんなことをしていたなって思いますね。
今のクラスに昔の俺みたいなやつがきたらどうしよう(笑)。
A はははは(笑)。
N (笑)。それだけ自分のことだけで精一杯だったんですね。
人にどう受け取られるか、そんなこと全然考えていなかった。
A 俗に言う、独りよがりっていう、はまりがちなパターンですよね。
N 誰かに作品を変えられてしまうことが、ものすごいイヤだったんですね。
関テレ行って企画を考えたり、テレビ東京のプロデューサーに書いてみたらって
言われて書いたこともあったんだけどね。
でも、提出すると手を入れられるのね。それで頭にくるわけ。
A (笑)。
N それで、僕は職業ライターにはなれないって思った。シナリオからも遠ざかりましたね。
「自分のことを表現する方法を見つけた」と思っていたけど、それが出来そうにない。
ライターとしては一番ダメな考えだったなと今なら思えますけどね。
A なるほどなぁ…。それはいくつくらいの時ですか?
N 30半ばから後半くらいだったと思います。
それからは大学で働いたりとか、自分のやっている仕事に集中しましたね。
でもシナリオの興味を失ったわけじゃなくて、
「引退したら自分の作品を書きたいな」と思っていたんです。
プロになるとかじゃなくて、ライフワークとしてやろうかなと。
「引退したらライフワークとしてやろうと思った」という新田さんが、シナリオ・センターの講師として復帰し、これから作家集団をどのように運営していくのか、後半はそこら辺をしっかりお聞きします。