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2013.2.25

創設者を、人間として深掘りするためのシナリオの使い方

昨年5月15日と6月5日に、日本女子体育大学で授業をしてきました。大学での授業は、高知工科大学、成城大学に続き、3校目です。これまでは、キャリア形成などに基づいて、シナリオの授業を展開してきました。今回は大学一年生の教養演習という授業での実施です。ねらいは、大学の創設者について深く知ることです。

 

■トクヨも同じ女ですもの

大学の創設者と言えば、早稲田大学の大隈重信や慶應義塾大学の福沢諭吉など、なんだか、自分とはまったく共通点のないすごい人のような気がします。とはいえ、彼らだって恋をすれば失恋もしたでしょうし、お酒を飲めば失敗もあったでしょう。私たちと同じ人間だもの。

教科書に出てくる人、歴史上で活躍した人というのは憧れ性ばかりで、ドラマで言うところの憧れ性と共通性の二面性が見えてきません。そのため血の通った人物像を想像しにくいのです。日本女子体育大学の創設者、二階堂トクヨもその一人。学生からしたら、「自分と共通点のない大学を創ったすごい女性」くらいの認識だと思います。

ですが、トクヨさんも子供時代があったし、失恋もしたし、体育が嫌いだったし、嫌なことがあるとふて寝もしていた、そんな一面もあったのです。実は大学の創設者も学生も、同じ一人の女性なのです。

※二階堂トクヨさんとは?

文学少女だったトクヨは体育が大の苦手。赴任先の金沢の学校では体操教師にさせられノイローゼに。だが、やがて体操の研究で評価を得、イギリスに留学。軍隊式ではなく健康のための女子体育を日本に広めようと、41歳で代々木の民家で体操塾を開校する……。詳しくは日本女子体育大学公式サイト「創立者 二階堂トクヨ」

■単に調べるだけはつまらない

「二階堂トクヨさんって、朝ドラになってもいいと思うくらい、面白い人物なんです」

そう話してくれたのは、今回、授業を依頼してくださった影山先生です。日本女子体育大学では、創設者である二階堂トクヨさんの生涯についての見識を深める授業を、1年生の教養演習でやるそうですが、この単元、学生からはとてつもなく不評なのだとか。原因としては、まるでテストの読解問題のようだから。

例えば、テキストを読んだ後で、Q2「トクヨが英国に留学した国は?」Q6「トクヨが初の赴任地、金沢でノイローゼ同然なった原因を簡潔に説明しなさい」など……。

授業ですから、こういうアプローチもいいのかもしれませんが、学生が自発的にトクヨさんについて知りたくなるかと言えば、難しいでしょう。そこで影山先生から、トクヨさんについて、学生が自発的に知りたくなる仕掛けとして、シナリオを活用できないかとご相談をいただきました。影山先生と打合せをして、授業は、「トクヨさんについて知る」ことをテーマに、1週目の授業で、実際に短いシナリオを書き、シナリオの楽しさとキャラクターがドラマを展開させるという話をし、2週目と3週目でトクヨさんの人生グラフなどを作り、キャラクターのイメージを膨らまします。

そして4週目に、トクヨさんと学生が会話をするという設定で、シナリオを書いてもらうことにしました。最終週にシナリオを書くという目的があるので、学生たちは自発的にトクヨさんについて調べます。

■トクヨさんを想う

シナリオは、何が起きて、どうなったという“出来事”を追うのではなく、どう感じ、何をしたのかという人物のアクション・リアクションを描くことが大切です。トクヨさんの人生での出来事を追っているうちは、トクヨさんが血の通った人物として感じられません。ですが、シナリオを書くことで、岐路に立った時はどんなふうに悩んだのか、克服するためにどんな努力をしたのか、ディテールを想像することで、血の通ったトクヨさんが浮かび上がります。

最終週の授業の際、「先週、トクヨ(像)と写真撮ったからね」「ってか、トクヨ、勉強しすぎじゃね」などと話す彼女たちがいました。創設者二階堂トクヨが、人間トクヨとして、学生たちの中で、生き生きとしたイメージになっていったのです。 

■人間への感度を引き出す

今の学生は、ITネイティブ世代と言われ、直接的な人間関係に距離感があるといわれています。ですが、授業の中で、挿話として、私のこれまでの人生の失敗談などをすると、顔をあげて話を聞き出します。実は、人に対する感度は高いのです。独特の繊細さが距離感を作っているだけなのです。どうすればお互いに気持ち良くつきあうことができるのかさえ分かれば、濃い人間関係を築くことができるのです。

以前、麻布小学校でシナリオの授業をした成果として、子どもたちが30分にも及ぶ歴史劇を作り上げたことがありました。その時、担任の先生は「シナリオを書いていく中で、歴史上の人物が何を感じ、どう生きようとしたのかについて、より深く考えるきっかけになった」とおっしゃっていました。シナリオを書くことで、人間を見る目が磨かれるのです。

シナリオを使って、学生たちが創設者の建学精神を知ることで、大学はその哲学を学生たちに継承できます。学生たちは、自分たちが大学で学ぶ意味、意義を深めることができます。中途退学者を減らすこともできるかもしれません。そして何より、人に興味を持つということと、その上でいかにコミュニケーションをしていけばいいのかということをシナリオから学びとってもらえるのです。

 

・学生R・Iさん

シナリオという手法で、トクヨさんの人生を考えたことで、想像がしやすかった。トクヨさんの人生は、意外に安定した人生だったのかなと思った。目標を掲げ達成するというサイクルがよい。一生を通して、常に目標や夢があるのはとてもいいと思った。

・学生S・Iさん

過去が違うと、今が違ってくる。人それぞれ違うから、人物は違う人になる! 私が描いたトクヨさんのイメージは、あまりしゃべらない人だけど、本当のトクヨさんを見てみたいと思った。

・学生M・Iさん

トクヨさんの人生って、波乱万丈だったんんだなあ、でもすごく頑張ったんだなと思った。それに人生グラフを作ってみて、人生悪いことだけじゃなくて、よいことも必ずあるのだと思った。

・学生A・Eさん 

私はトクヨさんを「すごくしっかりしている人」とイメージしていましたが、実はしっかりしていない私と、とても気が合うと思います。

 ・学生E・Kさん

トクヨさんを知るまでは、すごく清潔で、スポーツとか出来ないような人だと思っていたら、真逆でした。勉強好きで活発な人だと思いました。

・ 学生H・Iさん

相手のことを常に考えるということが大切だと思いました。今までの自分の人生をシナリオにするのも面白そう。今の日本女子体育大学があるのは、トクヨさんがいたからこそ。トクヨさんだからこそ、学校を設立できたのだと思いました。

 

 

シナリオは人間を描くことです。“人”に伝えるための技術と“人”に伝えるための発想は、私たちの生活すべてに活かすことができます。お問合せは、シナリオ・センター(03-3407-6936)の新井までお気軽に。

新井

 


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