menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

幸福なハダカ

シナリオ・センター代表の小林です。私事ですが、今日は長女の誕生日。子供はできにくいといわれながらン十年前、うんうん唸りながら産んだことを思いだしたりして・・・。
でも、あの痛みが伝わっているのかといえば伝わるわけもなく、自分のお腹からでてきたのに半身でもなく、こちらの想いがすべて伝わるわけでもなく、人間は、常にひとりです。

幸福なハダカ

先日、ちょっとご紹介した森美樹さんの「幸福なハダカ」(新潮社刊)を読ませていただきました。森さんはR-18文学賞を受賞され、その受賞作の入った「主婦病」(新潮社刊)は切り口の鋭さに、大きな話題を呼びました。
主婦のもつ様々な想い不満不安を短編連作でつないだものでしたが、「主婦」とはなんぞやというと問いかけを社会に提示したように思いました。

今作の「幸福なハダカ」は、成長ホルモン分泌不全性低身長症の朔也を通して、窒息しそうな日常から心も体も裸にしていく女性たちのお話です。
5部構成になっていて、新宿二丁目にあるバー「フラワーズ」を中心に朔也、鈴美、冬美恵、理都子、天音の日常と格闘している姿が繰り広がられます。
主人公というか狂言回しの朔也は、成長ホルモンの異常で6歳の身長で止まったしまった男性。身長は6歳のままだが、もちろん心も体も大人の男性。
夫との距離感に悩みながらライターの仕事を続ける主婦の天音、子供の頃から性的虐待を受け、男に体を売ることを何とも思わなくなっている20代のフリーターの鈴美、女性として自信のない仕事のできる40代の介護士冬美恵、両親の愛情を感じられないまま家族の意味を模索する朔也の妻理都子・・・それぞれが、朔也にヌードを撮影されることで、閉ざした心も人生も取り戻していく姿を描いています。
バー「フラワーズ」マスターが、日常の象徴のように、淡々と日常を過ごしながら、暖かな視線で登場人物すべてをみつけている姿が印象的でした。

うまいです。緻密な文章構成で一気に読ませてくれます。
先日、大山淳子さんが「R-18文学賞受賞者の方はみんなとてもうまいですよね」とおっしゃっていましたが、まさに森さんのこと。
R-18文学賞は、三浦しおんさん、辻村深月さん等女性作家が女性のための作品を選ぶのですが、女性目線は厳しく、男性には感じられないであろう(失礼!)女性ならでは感性を繊細に描いたものが選ばれているように思います。

森さんの「幸福なハダカ」は、女性なら誰でもが持つ劣等感、自己否定を描きながら、登場人物の誰かのどこかに、読者が感じることができるように構成しています。
読んでみてください。人はみなひとりなのだけれどひとりではないことを実感させられます。

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ