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小学生にもシナリオが書ける!〜キッズシナリオ・鎌倉編〜
(「月刊シナリオ教室」10年10月号掲載)

08年から始まったキッズシナリオの活動も、三年目を迎えました。少しずつですが、小学校以外の機関からも授業の依頼をいただいております。
 今回は、7月31日、8月1日の二日日間、計十時間にわたって行った鎌倉市川喜多映画記念館の「こどもシナリオ教室」について、ご報告をさせていただきます。この企画は、川喜多映画記念館と共同で行ったため、キッズシナリオとしては初めての試みがいくつかありました。

■キッズシナリオ初の試み
「もう、なに書いていいか、わかんないもん……帰っていい?ねー」
小学三年生のよっしーは、シナリオを書く時間になって、突然グズりだします。
その横では、二年生のダイスケが、「あのさぁ〜サッカー場の設定でもいいの?」とマイペースに聞いてきます。

「こどもシナリオ教室」に参加してくれたのは、小学2年生の男の子が二人、3年生の男の子が一人、4年生の女の子が一人、5年生は男女一人ずつの計六名でした。
学校ではない環境で授業をするのは、キッズシナリオとしては初めての試みです。担任の先生はいません。すべての統率をこちらで行わなくてはいけません。

さらに、低学年の子にも、シナリオが書けるように話さなくてはなりません。当初の募集は5、6年生でしたが、諸事情により低学年のお子さんにもご参加いただくことになりました。
川喜多映画記念館の方から、参加者の学年を聞いたときには、「低学年はやったことないけど、できるかな?」と不安になりました。
最後に、シナリオを書いてもらうだけではなく、そのシナリオを基に撮影をします。一日目にシナリオを書き、二日目に撮影をします。撮影に関しては、記念館の方にもご協力を頂きますが、はたして二日間、うまくできるのか……
 
■どう伝えるか
シナリオを教えるノウハウは、いままでの学校で培ってきましたから心配はありませんでした。
一番の問題は、低学年の子にもわかるように、「どう伝えるか」でした。しかも、どんなこども達かもわかりません。でたとこ勝負です。

小学4、5年生の三人は、こちらの話をある程度落ち着いて聞いてくれます。ですが、2、3年生の三人は自由。思いついたまま話しだしたり、ちょっかいを出したりします。おまけに、冒頭に「今日は、シナリオを書くからね」と言うと、「えぇ〜つまんなそう〜」と言う始末。
 開始三分、すでに心が折れそうになりながらも、ひざを着いて、目線を合わせます。リラックスボールを使った簡単な自己紹介から始めます。

徐々にですが、こども達と呼吸が合ってきます。こども達も、少しずつシナリオの時間に慣れてきます。横道にそれたり、グズったりしながらも、想像する楽しさ、書いて表現する楽しさを味わいだします。
その結果、「もう帰りたい」とグズっていたよっしーも、シナリオを完成させました。「つまんなそう」と言っていた2年生のタケは、ちゃんと葛藤の描かれたシナリオを書きました。
二日目は、4年生のみかこのシナリオを基に、それぞれのいい部分を付け足して、撮影用の決定稿を作りました。
そして、こども達で役者担当、監督担当、撮影担当と役割を決めて撮影に臨みます。

八月の暑い太陽の下で、監督役のしんぺいは、演技指導に熱が入ります。よっしーは、カチンコにシーンナンバーを書き入れ、役者の四人はセリフを必死で覚えます。そうしてできたのが、「鎌倉―夏のともだち―」という作品です。
出来上がった作品は、すぐに編集され、記念館内にある映像資料室で、親御さんたちの前で記念上映されました。五分にも満たない短い作品に、「みじけぇ、もう一回」と制作者自らアンコール上映を要求する一幕もありました。

■授業を創るのは誰か
シナリオを書き、撮影もし、作品も完成しました。何よりもこども達が楽しそうに、そして満足して帰っていきました。今回の試みは、成功したと言えるでしょう。
なぜ成功したのか。一つは、「どう伝えるか」に常に気を配った点です。新井一の理念でもある「わかりやすく伝える」に加え、低学年が「飽きないように伝える」ことにも、注意を払いました。
記念館のスタッフの方も、こども達に同じように接してくださいました。

しかし最大の要因は、こども達が、楽しんで取り組んでくれたことです。こども達が乗ってくれなかったら、授業として全く成立しなかったからです。
教育学者の斎藤孝さんは、授業は祝祭の場だと言います。祝祭の場は、講師一人で創り上げることはできません。そこでは参加する側のノリも重要になります。
授業を成功させるためには、講師が「何を、どう伝えるか」を工夫するのは当然です。さらには、参加者が「何を、どう受け止めるのか」も大切だということです。まさにアクションに対するリアクションです。
「こどもシナリオ教室」が成功したのも、こちらの「伝える」意識と、子供たちの「受け止める」意識の呼吸を合わせることができたからだと思います。

■気持ちの良い場を創るには
ドラマは、「人と人の間に流れる感情の交流を描くこと」(『シナリオの技術』p109)であると新井は言います。
家庭でも職場でも、友人との間でも、感情が交流する場が生まれます。その場を、気持ちの良い場にするのは、私たちの態度ひとつです。

私たちは、大切な人に対して、どんなアクションとリアクションを日常的にしているのでしょうか。
シナリオは、私たちの姿を映す鏡です。シナリオ的な発想によって、自分の行動を注意深く観察することができるようになれば、気持ちの良い場が世界中に生まれてくるのではないでしょうか。

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